教科書選び―教委の介入は要らない
教育には、政治やイデオロギーをもちこむべきではない。
教科書の採択をめぐり、異例の出来事があった。神奈川県立と東京都立の高
校に対し、両都県の教育委員会が特定の出版社を名指しにして、選ばないよ
う指導した。
問題にされたのは、実教出版の日本史教科書。指導の結果、選んだ高校は一
校もなかった。
教科書の採択権は教委にあるとはいえ、政治的中立は教育委員会
制度
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の根幹
である。行き過ぎと言わざるをえない。
神奈川では当初28校がこの教科書を希望した。だが県教委は「一部記述が
教委の方針と相いれない」と再考を求めた。
東京都教委は、希望を聞く前に「使用は適切でない」と各校に通知していた。大阪府でも、府教委が「記述が一面的」との見解を府立校に示している。
3教委が問題にしたのは、国旗と国歌について「一部の自治体で公務員への
強制の動きがある」と書いた一文だ。
東京や大阪などで起立や斉唱の命令に反した教員が処分された。そのことを
指している。
この教科書はもちろん国の検定を通っている。それどころかこの一文は検定
を経て修正されたものだ。
原文はもっとあいまいな
表
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現だったが、「説明不足でわかりにくい」と検定
意見がつき、この表現に直した。
文部科学省は「校長の職務命令に反すれば懲戒処分になりうるのだから、一
定の強制性はある。
『強制』は必ずしも誤った表現ではない」としている。常識的な解釈だろう。
事実を書いた記述であって、よいとか悪いとか価値判断を書いたわけではない。事実に誤りがないかぎり自由な記述を認めるのが検定の原則だ。