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(孙子兵法日文版)孙子の兵法(孙子兵法日文版)孙子の兵法 孫子の兵法 戦略に関しては、古今東西の最良の書が『孫子』であると思われる。クラウゼヴィッツの『戦争論』も孫子にはおよばない。ナポレオンは『孫子』を読み、実戦で生かしている。最近ではこれを「ビジネスに生かす」という観点から説かれているものもある。 当然、軍事戦略の基本を外すわけにはいかない。この基本を押さえずして技巧に走ったとしても、最終目標を見失い、目の前の小さな出来事に翻弄されるのが落ちであろう。 なお、『孫子』にはいくつかの版が発見されている。発見された中では最も古い形と思...

(孙子兵法日文版)孙子の兵法
(孙子兵法日文版)孙子の兵法 孫子の兵法 戦略に関しては、古今東西の最良の書が『孫子』であると思われる。クラウゼヴィッツの『戦争論』も孫子にはおよばない。ナポレオンは『孫子』を読み、実戦で生かしている。最近ではこれを「ビジネスに生かす」という観点から説かれているものもある。 当然、軍事戦略の基本を外すわけにはいかない。この基本を押さえずして技巧に走ったとしても、最終目標を見失い、目の前の小さな出来事に翻弄されるのが落ちであろう。 なお、『孫子』にはいくつかの版が発見されている。発見された中では最も古い形と思われる竹簡本をもとに書かれたのが、浅野裕一氏の講談社現代新書版であるが、これは全文解説ではなく、一部抜けている。その部分を金谷氏の岩波文庫版で補い、日本の一般書籍で手に入る最も古い形を再現しようと試みたのが、この電網将校参謀本部版「孫子の兵法」である。十二と十三の順が逆になっているなどはこの理由による。 参考:浅野裕一 『孫子を読む』講談社現代新書(竹簡本を基本) 金谷治訳注 『孫子』岩波文庫(宋本十一家注孫子) ?金谷治版 にあって浅野本にない部分は ?浅野裕一版と大きく違う所は で補った 目 录 一 計篇〈勝算はどちらにあるか〉 二 作戦篇(用兵とはスピードである) 総説 三 謀攻篇(戦わずして勝つ) 四 形篇(必勝の形をつくる) 五 勢篇(全軍の勢いを操る) 戦術原論 六 虚実篇(無勢で多勢に勝つ 方法 快递客服问题件处理详细方法山木方法pdf计算方法pdf华与华方法下载八字理论方法下载 ) 七 軍争篇(戦場にいかに先着するか) 八 九変篇(指揮官いかにあるべきか) 各論(1) 九 行軍篇〈敵情を見抜く〉 十 地形篇〈六種の地形をどう利用するか〉 十一 九地篇〈脱兎のごとく進攻せよ〉 十二(十三) 用間篇〈スパイこそ最重要員〉 各論(2) 十三(十二) 火攻篇〈軽々しく戦争を起こすな〉 , 総説 一 計篇〈勝算はどちらにあるか〉 一 計篇〈勝算はどちらにあるか〉 一 〈無謀な戦争をしてはならない〉 孫子曰わく、 軍事は国家の命運を決する重大事である。だから軍兵とは国の大事なり。死生のの死生を分ける戦場や、国家の存亡を分ける進路の選地、存亡の道、察せざるべからざ択は、くれぐれも明察しなければならない。そこで、るなり。 死生の地や存亡の道を考えるために五つの基本事項 故にこれを経,はか,るに五事を用い、さらにどこが死生の地でどれが存亡の道かをを以てし、これを校,くら,ぶる明らかにするため、彼我の優劣を比較?計量する基準に計を以てして、其の状を索,もを使って、双方の実状を探る。 と,む。 一に曰わく道、二に曰わく天、 基本事項(五事)は、(一)道、(二)天、(三)三に曰わく地、四に曰わく将、五地、(四)将、(五)法。 に曰わく法なり。 道とは、民をして上と意を同う(一)道 し、これと死すべくこれと生くべ くして、危,うたが,わざらしむ 民衆の意思を君主に同化させる、内政の正しさ。 るなり。 天とは、陰陽?寒暑?時制なり ふだんからこれが実行されているからこそ、戦争に〔、順逆?兵勝なり〕。 なっても、民衆に統治者と死生を共にさせることがで 地とは、〔高下?広狭?〕遠近?き、民衆は政府の命令に疑いを持たない。 険易?死生なり。 将とは、智?信?仁?勇?厳な(二)天 り。法とは、曲制?官道?主用な り。 陰陽、気温の寒暖、四季の推移のさだめや、天に対 凡そ此の五者は、将は聞かざるする順逆二通りの方法、および天への順応がもたらす ことなきも、これを知る者は勝勝利など。 ち、知らざる者は勝たず。 故に、これを校ぶるにするに計(三)地 を以てして、其の情を索む。 曰わく、主 孰れか賢なる、将 地形の高低、国土や戦場の広い狭い、距離の遠近、 孰れか能なる、天地 孰れか得た地形の険しさと平坦さ、軍を敗死させる地勢と生存さ る、法令 孰れか行なわる、兵衆 せる地勢など。 孰れか強き、士卒 孰れか練,な(四)将 ら,いたる、賞罰 孰れか明らか なると。 物事を明察できる智力、部下の信頼、部下を思いや 吾、これを以て勝負を知る。 る仁慈の心、困難にくじけない勇気、軍隊を維持する 厳格さなど、将軍が備える能力。 二 将 吾が計を聴くときは、これを 用うれば必ず勝つ、これを留め(五)法 ん。将 吾が計を聴かざるとき 軍隊の部署割りを定めた軍法、軍を監督する官吏のは、これを用うれば、必ず敗る、職権を定めた軍法、君主が将軍とかわした軍の指揮権これを去らん。 についての軍法など。 計、利として以て聴かるれば、乃 ちこれが勢を為して、以て其の外 およそこれら五つの事項は、いやしくも将軍であるを佐,たす,く。勢とは利に因り以上、だれでも聞き知ってはいるが、その重要性を思て権を制するなり。 い知っている者は勝ち、単にうわべの知識として知っ ているだけの者は勝てない。 そこで、彼我の死生の地や存亡の道をはっきりさせ るため、優劣を具体的に比較?計量する基準(七計) を用いて、実際に両者の実状を探究してみるのであ る。 その内訳は、 ,:君主はどちらが民心を掌握できる賢明さを備え ているか ,:将軍の能力はどちらが優れているか ,:天地がもたらす利点はどちらにあるか ,:軍法や命令はどちらが徹底しているか ,:兵力数はどちらが強大か ,:兵士はどちらが軍事訓練に習熟しているか ,:賞罰はどちらが明確に実行されているか といったことである。わたしはこうした比較?計量に よって、開戦前からすでに勝敗の行方を察知する。 将軍がわたしのはかりごとに従う場合には、彼を用 いたならきっと勝つであろうから留任させる。将軍が わたしのはかりごとに従わない場合には、彼を用いた ならきっと負けるであろうからやめさせる。 はかりごとの有利なことがわかって従われたなら ば、そこで勢ということを助けとして出陣後の外謀と する。勢とは、有利な状況を見れば、それにもとづい てその場に適した臨機応変の処置を取ることである。 三 〈戦争とは敵をだますことである〉 兵とは詭道なり。 戦争とは、敵をだます行為である。 故に、能なるもこれに不能を示 し、用なるもこれに不用を示し、 だから、本当は自軍にある作戦行動が可能であって近くともこれに遠きを示し、遠く も、敵に対しては、とてもそうした作戦行動は不可能ともこれに近きを示し、利にしてであるかに見せかける。本当は自軍がある効果的な運これを誘い、乱にしてこれを取用のできる状態にあっても、敵に対しては、そうしたり、実にしてこれに備え、強にし効果的運用ができない状態にあるかのように見せかてこれを避け、怒にしてこれを撓 ,みだ,し、〔〔卑にしてこれをける。 驕らせ、佚にしてこれを労し、親 また、実際は目的地に近づいていながら、敵に対しにしてこれを離す〕〕。其の無備ては、まだ目的地から遠く離れているかのように見せを攻め、その不意に出ず。此れ兵かける。実際は目的地から遠く離れているにも関わら家の勝にして、先きには伝うべかず、敵に対しては、既に目的地に近づいたかのようにらざるなり。 見せかける。 こうした、いつも敵にいつわりの状態を示す方法に よって、 敵が利益を欲しがっているときは、その利益を餌 に敵軍の戦力を奪い取る。 敵の戦力が充実しているときは、敵の攻撃に備え て防禦を固める。 敵の戦力が強大なときは、敵軍との接触を回避す る。 敵が怒り狂っているときは、わざと挑発して敵の 態勢をかき乱す。 敵が謙虚なときはそれを驕りたかぶらせる。 敵が安楽であるときはそれを疲労させる。 敵が親しみあっているときはそれを分裂させる。 敵が自軍の攻撃に備えていない地点を攻撃する。 敵が自軍の進出を予想していない地域に出撃す る。 これこそが兵家の勝ち方であって、そのときどきの 敵情に応じて生み出す、臨機応変の勝利であるから、 出征する前から、このようにして勝つと予告はできな いのである。 四 〈戦う前に勝敗を知る〉 そもそもまだ会戦もしないうちから廟堂で目算し 夫れ未だ戦わずして廟算,びょ て既に勝つのは、五事?七計を基準に比較?計量してうさん,して勝つ者は、算を得る得られた勝算が、相手よりも多いからである。まだ戦こと多ければなり。未だ戦わずし端も開かぬうちから廟算して勝たないのは、勝算が相て廟算して勝たざる者は、算を得手よりも少ないからである。勝算が多い方は実戦でもること少なければなり。算多きは勝利するし、勝算が少ない方は、実戦でも敗北する。勝ち、算少なきは勝たず。而るをましてや勝算が一つもないというに至っては、何をか況や算なきに於いてをや。吾れ此いわんやである。わたしがこうした比較?計算によっれを以てこれを観るに、勝負見てこの戦争の行方を観察するに、もはや勝敗は目に見,あら,わる。 えている。 二 作戦篇(用兵とはスピードである) 二 作戦篇(用兵とはスピードである) 一 〈戦争は莫大な浪費である〉 孫子曰わく、 凡そ用兵の法は、 およそ軍隊を運用するときの一般原則としては、軽馳車千駟?革車千乗?帯甲十万、戦車千台、皮革で装甲した重戦車千台、歩兵十万人の千里にして糧を饋,おく,るとき編成規模で、四百キロの外地に兵糧を輸送する形態のは、則ち内外の費?賓客の用?膠場合には、民衆と政府の出費、外国使節の接待費、皮漆の材?車甲の奉、日に千金を費革を接着したり塗り固めたりする膠や漆などの工作やして、然る後に十万の師挙がる。 材料の購入費、戦車や甲冑の供給などの諸経費に、日 其の戦いを用,おこ,なうや久ごとに千金もの莫大な金額を投じ続け、そうした念入しければ則ち兵を鈍,つか,らせりな準備の後に、ようやく十万の軍が出動できるよう鋭を挫く。城を攻むれば則ち力屈になる。 ,つ,き、久しく師を暴,さら, さば則ち国用足らず。 こうした外征軍が戦闘するとき、対陣中の敵に勝つ それ兵を鈍らせ鋭を挫き、力をまで長期持久戦をすることになれば、自軍を疲労させ屈くし貨を殫,つ,くすときは、て鋭気を挫く結果になり、また敵の城を攻囲すれば、則ち諸侯其の弊に乗じて起こる。戦力を消耗し尽くしてしまい、また野戦も攻城もせず智者ありと雖も、その後を善くすにいたずらに行軍や露営を繰り返して、長期に渡り軍ること能わず。 を国外に張り付けておけば、国家経済は窮乏する。 故に兵は拙速なるを聞くも、い まだ巧久を睹,み,ざるなり。そ もし、このような戦い方をして、軍が疲労して鋭気れ兵久しくして国の利する者は、が挫かれたり、あるいは戦力が消耗しきったり、財貨未だこれ有らざるなり。故に尽くを使い果たしたりする状態に陥れば、それまで中立だ用兵の害を知らざる者ば、則ち尽った諸侯も、その疲弊につけ込もうとして兵をあげるく用兵の利をも知ること能わざる始末となる。いったんこうした窮地に立ってしまえなり。 ば、いかに知謀の人でも、善後策を立てることはでき ない。 だから戦争には、少々まずくとも素早く切り上げる ということはあっても、うまくて長引くということは ない。そもそも戦争が長期化して国家の利益になった ためしはない。だから、用兵につきまとう損害を徹底 的に知り尽くしていない者には、用兵がもたらす利益 を完全に知り尽くすこともできないのである。 二 〈兵站こそ生命線〉 巧みに軍を運用する者は、民衆に二度も軍役を課し 善く兵を用うる者は、役は再びたりせず、食糧を三度も前線に補給したりはしない。籍,せき,せず、糧は三たびは載戦費は国内で調達するが、食糧は敵に求める。このよ,さい,せず。用を国に取り、糧 を敵に因る。故に軍食足るべきなうにするから、兵糧も十分まかなえるのである。 り。 国家が軍隊のために貧しくなる原因は、遠征軍に遠 くまで補給物資を輸送するからである。遠征軍に遠方 国の師に貧なる者は、遠師にしまで物資を輸送すれば、その負担に耐えかねて、民衆て遠く輸,いた,せばなり。遠師は生活物資が欠乏して貧しくなり、国境近くに軍隊がにして遠く輸さば、則ち百姓貧し。出動すれば、近辺の商工業者や農民たちは、大量調達近師なるときは貴売すればなり。による物不足につけ込んで、物の値段をつり上げて売貴売すれば則ち財竭,つ,く。財るようになる。物価が高騰すれば、政府は平時よりも竭くれば則ち以て丘役に急にし高値で軍需物資を買い上げることになり、国家財政はて、力は中原に屈,つ,き用は家枯渇してしまう。国家の財源が底をつけば、民衆に対に虚しく、百姓の費、十にその七 を去る。公家の費、破車罷馬、甲する課税も厳しさを増す。 冑弓矢、戟楯矛櫓、丘牛大車、十 こうして前線では国力を使い果たし、国内では人民にその六を去る。 の家財が底をつく状態になれば、民衆の生活費は普段 の六割までもが削られる。一方、政府の経常支出も、 故に智将は務めて敵に食む。敵戦車の破損や軍馬の疲労、戟をはじめとする武器や矢の一鍾を食むは、吾が二十鍾に当や弩、甲冑や楯やおおだて、輸送用に徴発した牛や大たり、キ,艸己心,カン,禾干,車などの損耗補充によって、平時の七割までもが削減一石は吾が二十石に当たる。 される。 三 だからこそ遠征軍を率いる智将は、できるだけ適地 故に敵を殺すものは怒なり。敵で食糧を調達するよう努める。輸送コストを考えれ の利を取るものは貨なり。故に車ば、敵の食糧五十リットルを食らうのは、本国から供 戦にして車十乗以上を得れば、其給される千リットルにも相当し、牛馬の資料となる豆 の先ず得たる者を賞し、而してそ殻やわら三十キログラムは、本国から供給される六百 の旌旗を改め、車は雑,まじ,えキログラムにも相当する。 てこれに乗らしめ、卒は善くして そこで、敵兵を殺すのは、奮い立った気勢によるのこれを養わしむ。是れを敵に勝ちであるが、敵の物資を奪い取るのは利益の為である。て強を益,ま,すと謂う。 だから車戦で車十台以上を捕獲したときには、その最 四 初に捕獲した者に賞として与え、敵の旗印を味方のも のに取り替えた上、その車は味方のものにたちまじっ 故に兵は勝つことを貴ぶ。久して乗用させ、その兵卒は優遇して養わせる。これが敵 きを貴ばず。 に勝って強さを増すということである。 故に兵を知るの将は、生民の司 以上のようなわけで、戦勝は勝利を第一とするが、 命、国家安危の主なり。 長引くのはよくない。 以上のようなわけで、戦争の利害をわきまえた将軍 は、人民の生死の運命を握る者であり、国家の安危を 決する主宰者である。 三 謀攻篇(戦わずして勝つ) 三 謀攻篇(戦わずして勝つ) 一 〈百戦百勝はベストではない〉 孫子曰わく、 およそ軍事力を用いる原則としては、敵国を保全し 凡そ用兵の法は、国を全うするたまま勝つのが最上の策で、敵国を撃破して勝つのはを上と為し、国を破るはこれに次次善の策である。 ぐ。 軍を全うするを上となし、軍を 敵の軍団(一万二千五百人)を保全したまま勝つの破るはこれに次ぐ。 が最上の策で、敵の軍団を撃破して勝つのは次善の策 旅を全うするを上となし、旅をである。 破るはこれに次ぐ。 卒を全うするを上となし、卒を 敵の旅団(五百人)を保全したまま勝つのが最上の破るはこれに次ぐ。 策で、敵の旅団を撃破して勝つのは次善の策である。 伍を全うするを上となし、伍を 破るはこれに次ぐ。 敵の大隊(百人)を保全したまま勝つのが最上の策 是の故に百戦百勝は善の善なるで、敵の大隊を撃破して勝つのは次善の策である。 者に非ざるなり。戦わずして人の 兵を屈するは、善の善なる者なり。 敵の小隊(五人)を保全したまま勝つのが最上の策 で、敵の小隊を撃破して勝つのは次善の策である。 したがって、百度戦闘して百度勝利を収めるのは、 最善の方策ではない。戦わずに敵の軍事力を屈服させ ることこそ、最善の方策なのである。 二 〈城攻めは愚の骨頂〉 だから軍事力の最高の運用法は、敵の策謀を未然に 故に上兵は謀を伐つ。其の次ぎ は交を伐つ。その次は兵を伐つ。打ち破ることである。 その下は城を攻む。攻城の法は、 その次は敵国と友好国との同盟関係を断ち切るこ已むを得ざるが為めなり。 とである。 櫓?フン,車賁,オン,車温-水, その次は敵の野戦軍を撃破することである。 を修め、器械を具うること、三月 にして後に成る。踞,キョ,イン 最も劣るのは敵の城を攻撃することである。城を攻,門西土,又た三月にして後に已めるという方法は、他に手段がなくてやむを得ずに行わる。将 其の忿,いきどお,りなう。 に勝,た,えずしてこれに蟻附,ぎ ふ,すれば、士卒の三分の一を殺 城攻めの原則としては、おおだてや城門へ寄せる装して而も城の抜けざるは、此れ攻甲車を整備し、攻城用の機会を完備する作業は、三カの災いなり。 月も要してやっと終了し、攻撃陣地を築く土木作業も 故に善く兵を用うる者は、人の同様に三カ月かかってようやく完了するのである。も 兵を屈するも而も戦うに非ざるなし将軍が怒りの感情をこらえきれず、攻撃態勢ができ り。人の城を抜くも而も攻むるにあがるのを待たずに、兵士絶ちにアリのように城壁を 非ざるなり。人の国を毀,やぶ,よじ登って攻撃するよう命じ、兵員の三分の一を戦死 るも而も久しきに非ざるなり。必させてもさっぱり城が落ちないのは、これぞ城攻めが らず全きを以て天下に争う。 もたらす災厄である。 故に兵頓,つか,れずして利全 それゆえ、用兵に巧みな者は、敵の野戦軍を屈服さ うすべし。此れ謀攻の法なり。 せても、決して戦闘によったのではなく、敵の城を陥 落させても、決して攻城戦によったのではなく、敵国 三 を撃破しても、決して長期戦によったのではない。必 ず敵の国土や戦力を保全したまま勝利するやり方で、 故に用兵の法は、十なれば則ち天下に国益を争うのであって、そうするからこそ、軍 これを囲み、五なれば則ちこれをも疲弊せずに、軍事力の運用によって得られる利益を 攻め、倍すれば則ちこれを分かち、完全なものとできる。 敵すれば則能,すなわ,ちこれと 戦い、少なければ則能ちよくこれ これこそが、策謀で敵を攻略する原則なのである。 を逃れ、しからざれば則能ちこれ を避く。故に小敵の堅は、大敵の そこで、戦争の原則としては、味方が十倍であれば 擒なり。 敵軍を包囲し、五倍であれば敵軍を攻撃し、倍であ れば敵軍を分裂させ、等しければ戦い、少なければ 四 退却し、力が及ばなければ隠れる。だから小勢なのに 強気ばかりでいるのは、大部隊の捕虜になるだけであ 夫れ将は国の輔なり。輔 周なる。 れば則ち国必ず強く、輔 隙あれ ば則ち国必らず弱し。故に君の軍 将軍とは国家の助け役である。助け役が主君と親密 に患うる所以の者には三あり。 であれば国家は必ず強くなるが、助け役が主君と隙が あるのでは国家は必ず弱くなる。そこで、国君が軍事 軍の進むべからざるを知らずしについて心配しなければならないことは三つある。 て、これに進めと謂い、軍の退く べからざるを知らずして、これに(一)軍隊をひきとめる 退けと謂う。是れを「軍を糜す」 と謂う。 軍隊が進んではいけないことを知らないで進めと 命令し、軍隊が退却してはいけないことを知らないで 三軍の事を知らずして三軍の政退却せよと命令する。 を同じくすれば、則ち軍士惑う。 (二) 三軍の権を知らずして三軍の任 を同じうすれば、則ち軍士疑う。 軍隊の事情も知らないのに、軍事行政を将軍と一 三軍既に惑い且つ疑うときは、則緒に行なうと、兵士たちは迷うことになる。 ち諸侯の難至る。是れを「軍を乱 (三) して勝を引く」という。 軍隊の臨機応変の処置もわからないのに軍隊の指 揮を一緒に行なうと、兵士たちは疑うことになる。 軍隊が迷って疑うことになれば、外国の諸侯たちが 兵を挙げて攻め込んでくる。こういうのを「軍隊を乱 して勝利を取り去る」というのである。 五 〈彼を知り己を知らば〉 そこで、勝利を予知するのに五つの要点がある。 故に勝を知るに五あり。 (一)戦ってよい場合と戦ってはならない場合とを 戦うべきと戦うべからざるとを 知る者は勝つ。衆寡の用を識る者分別している者は勝つ。 は勝つ。上下の欲を同じうする者(二)大兵力と小兵力それぞれの運用法に精通しては勝つ。虞を以て不虞を待つ者はいる者は勝つ。 勝つ。将の能にして君の御せざる 者は勝つ。 (三)上下の意思統一に成功している者は勝つ。 この五者は勝を知るの道なり。 (四)計略を仕組んで、それに気づかずにやってく る敵を待ち受ける者は勝つ。 故に曰わく、彼れを知りて己を 知れば、百戦して殆,あや,うか(五)将軍が有能で君主が余計な干渉をしない者はらず。彼れを知らずして己を知れ勝つ。 ば、一勝一負す。彼れを知らず己 を知らざれば、戦う毎,ごと,に これら五つの要点こそ、勝利を予知するための方法必らず殆うし。 である。 したがって、軍事においては、相手の実状も知って 自己の実情も知っていれば、百たび戦っても危険な状 態にならない。相手の実情を知らずに自己の実状だけ を知っていれば、勝ったり負けたりする。相手の実情 も知らず自己の実状も知らなければ、戦うたびに必ず 危険に陥る。 , 戦術原論 四 形篇(必勝の形をつくる) 四 形篇(必勝の形をつくる) 一 〈守備は攻撃よりも強力〉 孫子曰わく、 古代の巧みに戦う者は、まず敵軍が自軍を攻撃して 昔の善く戦う者は先ず勝つべかも勝つことのできない態勢を作り上げた上で、敵軍がらざるを為して、以て敵の勝つべ 態勢を崩して、自軍が攻撃すれば勝てる態勢になるのきを待つ。 勝つべからざるは己れに在るを待ちうけた。 も、勝つべきは敵に在り。故に善 敵が自軍に勝てない態勢を作り上げるのは己れにく戦う者は、能く勝つべからざる属することであるが、自軍が敵軍に勝てる態勢になるを為すも、敵をして必ず勝つべかかどうかは敵軍に属することである。だから巧みな者らしむること能わず。故に曰わく、でも、敵軍が決して自軍に勝てない態勢をつくること「勝は知るべし、而して為すべかはできても、敵に態勢を崩して自軍が攻撃すれば勝てらざる」と。 る態勢を取らせることはできない。そこで、「敵軍が 勝つべからざる者は守なり。勝こうしてくれたら自軍はこうするのに、と勝利を予測つべき者は攻なり。守は則ち足らすることはできても、それを必ず実現することはできざればなり。攻は則ち余り有ればない」と言われるのである。 なり。〔〔?守らば則ち余り有り て、攻むれば則ち足らず。〕〕善 敵が自軍に勝てない態勢とは守備形式のことであく守る者は九地の下に蔵,かく,り、自軍が敵に勝てる態勢とは攻撃形式のことであれ、善く攻むる者は九天の上に動る。 く。故に能く自ら保ちて勝を全う するなり。 守備形式を取れば戦力の余裕があり、攻撃形式を取 れば戦力が不足する。 古代の巧みに守備する者は、大地の奥底深く潜伏 し、好機を見ては天空高く機動した。だからこそ、自 軍を敵の攻撃から保全しながら、しかも敵の態勢の崩 れを素早く衝いて勝利を逃がさなかったのである。 二 〈勝利の軍は開戦前に勝利を得ている〉 勝利を読みとるのに一般の人々にもわかるような 勝を見ること衆人の知る所に過ものがわかる程度では、最高に優れたものではない。ぎざるは、善の善なる者に非ざる戦争して打ち勝って天下の人々が立派だとほめるのなり。戦い勝ちて天下善なりと曰では、最高に優れたものではない。 うは、善の善なる者に非ざるなり。 だから、細い毛を持ち上げるのでは力持ちといえ 故に秋毫を挙ぐるは多力と為さず、太陽が月が見えるというのでは目が鋭いといえず。日月を見るは明目と為さず。ず、雷のひびきが聞こえるというのでは耳が聡いとは雷霆を聞くは聡耳と為さず。 いえない。 古えの所謂善く戦う者は、勝ち 昔の戦いに巧みと言われた人は、普通の人では見分易きに勝つ者なり。故に善く戦うけのつかない勝ちやすい機会をとらえて、そこで打ち者の勝つや、智名も無く、勇功も勝ったものである。だから、戦いに巧みな人が勝った無し。故に其の戦い勝ちてたがわ場合には、知謀優れた名誉もなければ、武勇優れた手ず。たがわざる者は、其の勝を措柄もない。そこで、彼が戦争をして打ち勝つことは間く所、已に敗るる者に勝てばなり。違いない。間違いないというのは、その勝利を収める故に善く戦う者は不敗の地に立 すべては、既に負けている敵に打ち勝つからである。ち、而して敵の敗を失わざるなり。それゆえ、戦いに巧みな人は絶対の不敗の立場にあっ是の故に勝兵は必ず勝ちて、而るて敵の態勢が崩れて負けるようになった機会を逃さ後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いないのである。以上のようなわけで、勝利の軍は開戦て而る後に勝ちを求む。 前にまず勝利を得てそれから戦争しようとするが、敗 軍はまず戦争を始めてからあとで勝利を求めるもの である。 三 〈兵法で大事な,つの項目〉 戦争の上手な人は、上下の人心を統一させるような 善く兵を用うる者は、道を修め政治を立派に行ない(,道)、さらに軍隊編成などのて法を保つ。故に能く勝敗の政を軍政をよく守る(,法)。だから勝敗を自由に決する為す。 ことができるのである。 四 兵法で大事なのは、 兵法は、一に曰わく度,たく,、 二に曰わく量、三に曰わく数、四 一:ものさしではかること,度 に曰わく称、五に曰わく勝。地は 二:ますめではかること,量 度を生じ、度は量を生じ、量は数 を生じ、数は称を生じ、称は勝を 三:数えはかること,数 生ず。 四:くらべはかること,称 故に、勝兵は鎰を以て銖を称,は か,るが若く、敗兵は銖を以て鎰 五:勝敗を考えること,勝 を称るが若し。 戦場の土地について広さや距離を考え(度)、その 結果について投入すべき物量を考え(量)、その結果 について動員すべき兵数を数え(数)、その結果につ いて敵味方の能力をはかり考え(称)、その結果につ いて勝敗を考える(勝)。 そこで、勝利の軍は充分の勝算を持っているから、 重い目方で軽い目方に比べるように優勢であるが、敗 軍では軽い目方で重い目方に比べるように劣勢であ る。 五 〈積水を千仭の谷に〉 彼我の勝敗を計量する者が、人民を戦闘させるにあ 勝者の民を戦わしむるや〔〔?たり、満々とたたえた水を千仭の谷底へ決壊させるよ勝を称る者の民を戦わすや〕〕、うに仕組むのは、それこそが勝利に至る態勢なのであ積水を千仭の谿に決するが若き者る。 は、形,かたち,なり。 五 勢篇(全軍の勢いを操る) 五 勢篇(全軍の勢いを操る) 一 〈分数、形名、奇正、虚実〉 孫子曰わく、 およそ戦争に際して、大勢の兵士を治めていてもま 凡そ衆を治むること寡を治むるるで少人数を治めているように整然といくのは、部隊が如くなるは、分数是れなり。 の編成(分数)がそうさせるのである。 衆を闘わしむること寡を闘わし むるが如くなるは、形名是れなり。 大勢の兵士を戦闘させてもまるで少人数を戦闘さ 三軍の衆、必らず敵に受,こた,せているように整然といくのは、旗や鳴りものなどのえて敗なからしむべき者は、奇正指令の設備(形名)がそうさせるのである。 是れなり。 兵の加うるところ、タン,石段, 大軍の大勢の兵士が敵の出方にうまく対応して決を以て卵に投ずるが如くなる者して負けることのないようにさせることができるのは、虚実是れなり。 は、変化に応じて処置する奇法と、定石どおりの正 法の使い分け(奇正)がそうさせるのである。 戦争が行なわれるといつでもまるで石を卵にぶつ けるようにたやすく敵を打ちひしぐことのできるの は、充実した軍隊ですきだらけの敵を撃つ虚実の運 用(虚実)がそうさせるのである。 二 〈奇と正は混沌としている〉 およそ戦闘というものは、定石どおりの正法で不敗 凡そ戦いは、正を以て合い、奇の地に立って敵と会戦し、状況の変化に適応した奇法を以て勝つ。故に善く奇を出だすで打ち勝つのである。したがって、うまく奇法をつか者は、窮まり無きこと天地の如く、う軍隊では、その変化は天地の動きのように窮まりな竭きざること江河の如し。終わりく、長江や黄河のように尽きることがない。終わってて復た始まるは、四時是れこれなは繰り返して始まる四季のように、暗くなってまた繰り。死して更,こもごも,生ずるり返して明るくなる日月のようである。 は日月これなり。 音は宮?商?角?徴?羽の五つにすぎないが、その 声は五に過ぎざるも、五声の変五音階の混じり有った変化はとても聞き尽くせない。は勝,あ,げて聴くべからず。 色は青?黄?赤?白?黒の五色に過ぎないが、その五 色は五に過ぎざるも、五色の変つの混じりあった変化はとても見尽くせない。味はは勝げて観るべからず。 酸?辛?しおから(酉咸)?甘?苦の五つに過ぎない 味は五に過ぎざるも、五味の変が、その五つの混じりあった変化はとても味わい尽く は勝げて嘗,な,むべからず。 せない。 戦勢は奇正に過ぎざるも、奇正戦闘の勢いは奇法と正法の二つに過ぎないが、そ の変は勝げて窮むべからず。奇正の混じりあった変化はとても窮め尽くせるものでは の相生ずることは、循環の端なきない。奇法と正法が互いに生まれでてくるありさま は、丸い輪をぐるぐる回って終点のないようなものでが如し。孰,た,れか能くこれをある。だれにそれが窮められようか。 窮めんや。 三 〈勢いのメカニズム〉 水が激しく流れて石をも漂わせるに至るのが、勢い 激水の疾,はや,くして石を漂である。 すに至る者は、勢なり。 猛禽が急降下し、一撃で獲物の骨を打ち砕くに至る 鷙鳥の撃ちて毀折に至る者は、のが、節目である。 節なり。 だから、巧みに戦うものは、その戦闘突入の勢いは 是の故に善く戦う者は、其の勢限度いっぱい蓄積されて険しく、その蓄積した力を放は険にして其の節は短なり。勢は出する節目は一瞬の間である。勢いを蓄えるのは弩の弩をひ,弓廣,くがごとく、節は弦をいっぱいに張るようなものであり、節目は瞬間的機を発するが如し。 に引き金を引くようなものである。 紛々紜々として闘い乱れて、見 混乱は整治から生まれる。憶病は勇敢から生まれ出すべからず。渾々沌々として形 円くして、敗るべからず。〔?軍る。軟弱は剛強から生まれる。 争編四〕 乱れるか治まるかは部隊の編成(分数)の問題であ る。憶病になるか勇敢になるかは、戦いの勢いの問題四 である。弱くなるか強くなるかは、軍の態勢(形)の 乱は治に生じ、怯は勇に生じ、問題である。 弱は強に生ず。 そこで、巧みに敵を誘い出すものは、敵にわかるよ 治乱は数なり。勇怯は勢なり。うな形を示すと敵はきっとそれについてくるし、敵に 強弱は形なり。 何かを与えると敵はきっとそれを取りに来る。利益を 見せて誘い出し、裏をかいてそれに当たるのである。 五 故に善く敵を動かす者は、これ に形すれば敵必らずこれに従い、 これに予,あた,うれば敵必らず これを取る。利を以てこれを動か し、詐を以てこれを待つ。 六 〈指揮官は兵を選ばない〉 したがって巧みに戦う者は、戦闘に突入する勢いに 故に善く戦う者は、これを勢によって勝利を得ようとし、兵士の個人的勇気には頼ら求めて人に責めず、故に善く人をずに、軍隊を運用する。そこで巧妙に戦う者は、人々択,えら,びて勢に任ぜしむ。勢を選抜し適所に配置して、軍全体の勢いに従わせるよに任ずる者は、〔〔?故に善く戦うにする。兵士たちを勢いに従わせる者が兵士を戦わう者は、これを勢に求め、人に責せるさまは、まるで木や石を転落させるようである。めずして、これが用を為す。故に 木や石の性質は、平らなところに安定していれば静止善く戦う者は、人を択びて勢に与しているが、傾斜した場所では運動し始め、方形であ,したが,わしむること有り。勢ればとどまっているが、円形であれば転がり始める。に与わしむる者は、〕〕その人をだから兵士たちを巧みに戦闘させる勢いが、丸い石を戦わしむるや木石を転ずるがごと先仭の山から転落させたようになるよう仕向けるのし。木石の性は、安ければ則ち静が、戦闘の勢いというものである。 かに、危うければ則ち動き、方な れば則ち止まり、円なれば則ち行 く。故に善く人を戦わしむるの勢 い、円石を千仭の山に転ずるが如 くなる者は、勢なり。 六 虚実篇(無勢で多勢に勝つ方法) 六 虚実篇(無勢で多勢に勝つ方法) 一 〈主導権を握る〉 孫子曰わく、 先に戦場にいて敵軍の到着を待ち受ける軍隊は安 凡そ先に戦地に処,お,りて敵楽だが、あとから戦場にたどり着いて、休む間もなくを待つ者は佚し、後れて戦地に処戦闘に駆けつける軍隊は疲労する。したがって巧みにりて戦いに趨,おもむ,く者は労戦う者は、敵軍を思うがままに動かして、決して自す。故に善く戦う者は、人を致し分が敵の思うままに動かされたりはしない。 て人に致されず。能く敵人をして 自ら至らしむる者はこれを利すれ 来てほしい地点に敵軍が自分から進んでやって来ばなり。能く敵人をして至るを得るようにさせられるのは、利益を見せびらかすからでざらしむる者はこれを害すればなある。やって来てほしくない地点に敵軍が来られないり。故に敵 佚すれば能くこれをようにさせられるのは、害悪を見せつけるからであ労し、飽けば能くこれを饑,う,る。 えしめ、〔〔安んずれば能くこれ を動かす。〕〕 敵が腰を落ち着けて休息をとり、安楽にしていれ ば、それを引きずり回して疲労させることができ、満二 腹していればそれを飢えさせることができるのは、敵 が必ず駆けつけてくる要地に出撃するからである。 其の必らず趨く所に出で、〔, 飢えしむる者は、その必ず趨く所 千里もの長距離を遠征しながら危険な目にあわなに出ずればなり。〕〔〔其の意,おいのは、敵兵がいない地域を進軍するからである。 も,わざる所に趨き、〕〕千里を 行いて労,つか,れざる者は、無 攻撃すれば決まって奪取するのは、そもそも敵が守人の地を行けばなり。攻めて必ら備していない地点を攻撃するからである。 ず取る者は、其の守らざる所を攻 むればなり。守りて必らず固き者 守備すれば決まって堅固なのは、そもそも敵が攻撃は、其の攻めざる所を守ればなり。してこない地点を守るからである。 故に善く攻むる者には、敵 其の 守る所を知らず。善く守る者には、 このようにするから、攻撃の巧みな者にかかると、敵 其の攻むる所を知らず。微な敵はどこを守ればよいのか判断できず、首尾の巧みなるかな微なるかな、無形に至る。者にかかると、敵はどこを攻めればよいのか判断でき神なるかな神なるかな、無声に至 ない。微妙、微妙、最高は無形にまで到達する。神業、る。故に能く敵の司命を為す。 神業、最高は無音にまで到達する。だからこそ、敵の 死命を制する主催者となれるのである。 三 〈敵をあやつる〉 自軍が進撃しても、決して敵軍がそれを迎え撃てな 進みて禦,ふせ,ぐ〔迎う〕べいのは、その進撃路が敵の兵力配備の隙を衝くからでからざる者は、其の虚を衝けばな り。退きて追う〔止む〕べからざある。 る者は、速かにして及ぶべからざ 自軍が退却しても、決して敵軍が阻止できないのればなり。故に我れ戦わんと欲すは、その退却路が遠すぎて追撃できないからである。 れば、〔〔敵 塁を高くし溝を深 くすと雖も、〕〕我れと戦わざる そこで、自軍が戦いを望めば、敵がどうしても自軍を得ざる者は、其の必らず救う所と戦わなければならなくなるのは、敵が絶対に救援にを攻むればなり。我れ戦いを欲せ出てくる地点を攻撃するからである。自軍が戦いを望ざれば、地を画してこれを守るとまなければ、地面に防衛戦を描いてそこを守っただけ雖も、敵 我れと戦うを得ざる者で、敵が決して防衛戦を突破して自軍と戦ったりできは、其の之,ゆ,く所に乖,そむ,ないのは、敵の進路をあらぬ方向にそらすからであけば〔あざむけば〕なり。 る。 四 〈兵力を集中せよ〉 そこで巧みに軍を率いる者は、敵軍には態勢をあら 故に〔善く将たる者は、〕人をわにさせておきながら、自軍の側は態勢を隠したまま形せしめて我れに形無ければ、則(無形)にするから、自軍は兵力を集中するが、敵軍ち我れは専,あつ,まりて敵は分はすべての可能性に備えようとして兵力を分散すかる。我れは専まりて一と為り敵 は分かれて十と為らば、是れ十をる。 以て其の一を攻むるなり。則ち我 自軍は集中して全兵力が一つの部隊となり、敵軍はれは衆にして敵は寡なり。能く衆分散して十の部隊になれば、それは敵の十倍の兵力を以て寡を撃てば、則ち吾が与,とで、味方の十分の一の敵を攻撃することを意味する。も,に戦う所の者は約なり。 自軍の兵力が全体としては寡少で、敵軍の兵力が全体 としては強大であっても、その小兵力で敵の大軍を撃 吾が与に戦う所の地は知るべか破できるのは、個々の戦闘において合同して戦う自軍らず、吾が与に戦う所の地は知る べからざれば、則ち敵の備うる所の兵力が一つに結集しているからである。 の者多し。敵の備うる所の者多け 自軍が全兵力を集結して戦おうとする地点を予知れば、則ち吾が与に戦う所の者はできないから、敵が兵力を配備する地点は多くなる。寡,すく,なし。故に前に備うれ敵が兵力を配置する地点が増えれば、それぞれの地点ば則ち後寡なく、後に備うれば則で自軍と戦う兵力は手薄になる。全面に備える者は後ち前寡なく、左に備うれば則ち右方が手薄になり、左翼に備える者は右翼が手薄にな寡なく、右に備うれば則ち左寡なり、すべての方面に備えようとする者は、あらゆる地く、備えざる所なければ則ち寡な点が手薄になる。 からざる所なし。寡なき者は人に 備うる者なればなり。衆,おお, それぞれの地点の兵力が手薄になるのは、相手の出き者は人をして己れに備えしむる現に備える受け身の立場だからである。常に会戦地点者なればなり。故に戦いの地を知での兵力が優勢になるのは、相手を自軍の出現に備えり戦いの日を知れば、則ち千里に して会戦すべし。戦いの地をしらさせる主体的な立場だからである。 ず戦いの日を知らざれば、則ち左 戦いが起こる地点が事前に判明しているならば、たは右を救うこと能わず、右は左をとえ千里の遠方であっても船長に到着して戦える。戦救うこと能わず、前は後を救うこいが起こる日時も予知できず、戦いが起こる地点も予と能わず、後は前を救うこと能わ知できないのでは、前衛は後衛を救援できず、後衛はず。 前衛を救援できず、左翼は右翼を救援できず、右翼は 左翼を救援できない。ましてや、遠い場合では数十里、 而るを況や遠き者は数十里、近近い場合でも数里先の遊軍に対しては、なおさら間にき者は数里なるをや。吾れを以て これを度,はか,るに、越人の兵合わないのだ。 は多しと雖も、亦た奚,なん,ぞ 以上のことから、わたしが呉と越の戦争の行方を予勝に益せんや。敵は衆しと雖も、測してみますと、越の総兵力がどれだけ多くても、何闘い無からしむべし。 ら勝利の助けにはなりますまい。こうしたり優から、 勝利は思いのままにできましょうと申し上げたので五 す。たとえ敵の総兵力がどんなに強大でも、闘えない 故にこれを策,はか,りて得失ようにできるのです。 の計を知り、これを作,おこ,し そこで、戦いの前に敵の虚実を知るためには、敵情て動静の理を知り、これを形,あを目算してみて利害損得の見積もりを知り、敵軍を刺らわ,して死生の地を知り、これ激して動かしてみて、その行動の基準を知り、敵軍のに角,ふ,れて有余不足の処を知はっきりした態勢を把握して、その敗死すべき地勢とる。 破れない地勢とを知り、敵軍と小ぜりあいしてみて、 六 優秀なところと手薄な所を知る。 故に兵を形すの極は、無形に至 そこで、軍の態勢の極致は、態勢を隠したままにす る。無形なれば、則ち深間も窺うることである。態勢が隠れていれば、深く入り込んだ こと能わず、智者も謀ること能わスパイでもかぎつけることができず、知謀すぐれた者 ず。形に因りて勝を錯,お,くも、でも考え慮ることができない。相手の態勢が読みとれ 衆は知ること能わず。人皆な我がれば、その態勢に乗じて勝利が得られるのであるが、 勝の形を知るも、吾が勝を制する一般の人にはそれを知ることができない。人々はみ 所以の形を知ること莫し。故に其な、味方の勝利のありさまを知っているが、味方がど の戦い勝つや復,くりかえ,さずのようにして勝利を決定したかというありさまは知 して、形に無窮に応ず。 らないのである。だから、その戦って打ち勝つありさ まには二度と繰り返しがなく、相手の形のままに対応 七 して窮まりがないのである。 夫れ兵の形は水に象,かたど, そもそも、軍の態勢は水の状態のようなものであ る。水の行は高きを避けて下,ひる。水の流れは高いところを避けて低いところへと走 く,きに趨,おもむ,く。兵の形るが、軍の態勢も、敵が備えをしている実のところを は実を避けて虚を撃つ。水は地に避けて隙のある虚のところを攻撃する。水は地形のま まに従って流れを定めるが、軍も敵情のままに従って因りて流れを制し、兵は敵に因り勝利を決する。だから、軍には決まった勢いというもて勝を制す。故に兵に常勢なく、のがなく、水には決まった形というものがない。うま水に常形なし。能く敵に因りて変く敵情のままに従って変化して勝利を勝ち取ること化して勝を取る者、これを神と謂のできるのが、計り知れない神業というものである。 う。 〔故に五行に常勝なく、四時に 常位なく、日に短長あり、月に死 生あり。〕 , 各論 七 軍争篇(戦場にいかに先着するか) 七 軍争篇(戦場にいかに先着するか) 一 〈強行軍は危険な賭け〉 孫子曰わく、 およそ軍を運用する方法としては、将軍が君主の出 凡そ用兵の法は、将 命を君よ撃命令を受けてから、軍を編成し兵士を統率して、敵り受け、軍を合し衆を聚,あつ,軍と対陣して静止するまでの過程で、戦場への軍の先め、和を交えて舎,とど,まるに、着を争う「軍争」ほど困難な作業はない。 軍争より難きは莫し。軍争の難き は、迂を以て直と為し、患を以て 軍争の難しさは、迂回路を直進の近道に変え、憂い利と為す。故に其の途を迂にしてごとを利益に転ずる点にある。だから、一見戦場に遠これを誘うに利を以てし、人に後い迂回路を取りながら、敵を利益で誘い出してきて、れて発して人に先きんじて至る。敵よりあとに出発しながら戦場を手元に引き寄せて此れ迂直の計を知る者なり。 敵よりも先に戦場に到着するというのは、迂回路を直 故に軍争は利たり、軍争は危た進の近道に変える計謀を知るものである。 り。軍を挙げて利を争えば則ち及 ばず、軍を委,す,てて利を争え 軍争はうまくやれば利益となるが、軍争は下手をすば則ち輜重捐,す,てらる。是のると危険をもたらす。もし全軍をあげて戦場に先着す故に、甲を巻きて趨,はし,り、る利益を得ようと競争すれば、大軍では機敏に動け日夜処,お,らず、道を倍して兼ず、先に戦場に到着できない。軍全体にかまわずに利行し、百里にして利を争うときは、益を得ようと競争すれば、輜重部隊は後方に捨て去ら則ち三将軍を擒,とりこ,にせられてしまう。 る。勁,つよ,き者は先きだち、 疲るる者は後れ、其の率 十にし こうしたわけで、重い兜を脱いで背負って走り、昼て一至る。五十里にして利を争う夜休まずに走行距離を倍にして強行軍を続け、百里かときは、則ち上将軍を蹶,たお,なたで利益を得ようと競争すれば、上軍?中軍?下軍す。其の率 半ば至る。三十里にの三将軍そろって捕虜にされる。強健な兵士は先になして利を争うときは、則ち三分のり、疲労した兵士は落後して、その結果は十人中一人二至る。是れを以て軍争の難きをがたどり着くにすぎない。 知る。 是の故に軍に輜重なければ則ち 同じ方法で、五十里かなたで利益を得ようと競争す れば、先鋒の上将軍を敗死させ、その比率は半分が到亡び、糧食なければ則ち亡び、委 積なければ則ち亡ぶ。 着するにとどまる。 同じ方法で、三十里かなたで利益を得ようと競争す二 れば、三分の二だけが到着する。 故に諸侯の謀を知らざる者は、 このように、軍が輸送部隊を失えば敗亡するし、兵予め交わること能わず。山林?険糧を失えば敗亡するし、財貨の蓄えを失えば敗亡する阻?沮沢の形を知らざる者は、軍 を行,や,ること能わず。郷導をのである。 用いざる者は、地の利を得ること そこで、諸侯たちの腹の内がわからないのでは、前能わず。 もって同盟することはできない。 山林?険しい地形?沼沢地などの地形がわからない のでは、軍隊を進めることはできない。 その土地の案内役を使えないのでは、地形の利益を 収めることはできない。 三 〈変幻自在の進撃〉 そこで、軍事行動は敵をあざむくことを基本とし、 故に兵は詐を以て立ち、利を動利益にのみ従って行動し、分散と集合の戦法を用いき、分合を以て変を為す者なり。 故に其の疾,はや,きこと風の如て臨機応変の処置を取るのである。 く、其の徐,しずか,なることは だから、疾風のように迅速に進撃し、林のように林の如く、侵掠することは火の如静まり返って待機し、火が燃え広がるように急激にく、動かざることは山の如く、知侵攻し、山のように居座り、暗闇のように実態を隠り難きことは陰の如く、動くことし、雷鳴のように突然動きだし、偽りの進路を敵には雷の震うが如くにして、郷を掠指示するには部隊を分けて進ませ、占領地を拡大す,かす,むるには衆を分かち郷,むるときは要地を分守させ、権謀をめぐらせつつ機動か,うところを指,しめ,すに衆する。【其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、を分かち〕、地を廓,ひろ,むる難知如陰、動如雷震、掠郷分衆、廓地分利、懸権而には利を分かち、権を懸けて而し動】 て動く。迂直の計を先知する者は 〔〔勝つ。〕〕此れ軍争の法なり。 迂回路を直進の近道に変える手を敵に先んじて察 知するのは、これこそが軍争の方法なのである。 四 〈鳴り物や旗〉 古い兵法書には「口で言ったのでは聞こえないか 軍政に曰わく、「言うとも相いら、太鼓や鐘の鳴り物を備える。指し示しても見えな聞えず、故に鼓鐸を為,つく,る。 視,しめ,すとも相い見えず、故いから、旗やのぼりを備える」とある。 に旌旗を為る」と。 そもそも、鳴り物や旗の類というのは、兵士たちの 耳目を統一するものである。兵士たちが集中統一され 夫れ金鼓?旌旗なる者は人の耳ているからには、勇敢な者でも勝手に進むことはでき目を一にする所以なり。人既に専ず、臆病な者でも勝手に退くことはできない。したが一なれば、則ち勇者も独り進むこって、乱れに乱れた混戦状態になっても、乱されることを得ず、怯者も独り退くことをとがなく、曖昧模糊で前後もわからなくなっても打ち得ず。紛々紜々,ふんふんうんう破られることがない。これが大部隊を働かせる方法でん,、闘乱して見るべからず、渾 渾沌沌、形円くてして敗るべからある。 ず。此れ衆を用うるの法なり。 だから、夜の戦いには火や太鼓をたくさん使い、昼 の戦いには旗やのぼりをたくさん使うのは、兵士たち 故に夜戦に火鼓多く昼戦に旌旗の耳目を変えさせるためのことである。 多きは、人の耳目を変うる所以な り。 故に三軍には気を奪うべく、将〈敵の軍隊の気力を奪う〉 軍には心を奪うべし。 こうして敵兵の耳目も欺くことができるのだから、 敵の軍隊の気力を奪い取ることができ、敵の将軍の心 是の故に朝の気は鋭、昼の気は 惰、暮れの気は帰。故に善く兵をを奪い取ることもできる。 用うる者は、其の鋭気を避けて其 そういうわけで、(朝方の気力は鋭く、昼頃の気力の惰帰を撃つ。此れ気を治むる者は衰え、暮れ方の気力は尽きてしまうものであるかなり。 ら)戦争の上手な人は、その鋭い気力を避け、衰えて 休息を求めているところを撃つが、それが敵の軍隊 治を以て乱を待ち、静を以て譁の気力を奪い取って、気力について打ち勝とうとする,か,を待つ。此れ心を治むる者ものである。 なり。 また、治まり、整った状態で、混乱した相手に当 近きを以て遠きを待ち、佚を以たり、冷静な状態でざわめいた相手に当たるが、そて労を待ち、飽を以て飢を待つ。れが敵の将軍の心を奪い取って、心について打ち勝と此れ力を治むる者なり。 うとするものである。 正々の旗を邀,むか,うること また、戦場の近くにいて、遠くからやってくるの無く、堂々の陳,じん,陣,を撃を待ちうけ、安楽にしていて疲労した相手に当たり、つこと勿し。此れ変を治むる者な腹いっぱいでいて飢えた相手に当たるが、それは戦り。 力について打ち勝とうとするものである。 また、よく整備した旗並びには戦いを仕掛けるこ とをせず、堂々と充実した陣立てには攻撃をかけな いが、それは敵の変化について打ち勝とうとするもの である。 ゆえに、戦争の原則としては、高い陵にいる敵を攻 めてはならず、丘を背にして攻めてくる敵は迎え撃 ってはならず、偽りの誘いの退却は追いかけてはな らず、鋭い気勢の敵兵には攻めかけてはならず、こ ちらを釣りにくる餌の兵士には食いついてはならな い。 八 九変篇(指揮官いかにあるべきか) 八 九変篇(指揮官いかにあるべきか) 一 〈臨機応変に対処する〉 およそ軍隊を運用する方法としては、将軍が君主の 孫子曰わく、 出動命令を受けて、軍を編成し、兵士を統率しながら 凡そ用兵の法は、高陵には向か進撃するにあたり、 うこと勿かれ、背丘には逆,むか,(一)ヒ地:足場の悪い土地には、宿営してはならうること勿かれ、絶地には留まる こと勿かれ、佯,しょう,北にはない。 従うこと勿かれ、鋭卒には攻むる〔大部隊の行軍が渋滞し、攻撃を受けても迅速な対応こと勿かれ、餌兵には食らうことが難しいから〕 勿かれ、帰師には遏むること勿か れ、囲師には必らず闕,か,き、(二)衢地:他の国々と三方で接続している土地で窮寇には迫ること勿かれ。此れ用は、天下の諸侯と親交を結ぶ。 兵の法なり。 〔地の利を生かして諸国に使節を派遣し、敵国を国際二 的孤立に追い込む〕 塗,みち,に由らざる所あり。(三)絶地:故国から遠く離れた土地には、とどま軍に撃たざる所あり。城に攻めざらず素早く通り過ぎる。 る所あり。地に争わざる所あり。 君命に受けざる所あり。 〔本国からの補給が困難なため、長期戦を避け、短期 決戦を行なう〕 三 (四)囲地:背後が三方とも険しく、前方が細い出 故に将 九変の利に通ずる者口になっている土地では、脱出の計謀をめぐらせる。 は、兵を用うることを知る。 〔前方に開いている通路に守備隊を派遣して封鎖し 将 九変の利に通ぜざる者は、た上で、後方に撤退する〕 地形を知ると雖も、地の利を得る こと能わず。兵を治めて九変の術(五)死地:背後が三方とも険しく、前方の細い出を知らざる者は、五利を知ると雖口に敵が待っている土地では、必死に力戦する。 も、人の用を得ること能わず。 〔全軍一丸となって出口から突出して、切り抜ける〕 (六)道路には、そこを経由してはならない道路が ある。 〔行軍が渋滞する難所があって、浅く侵入すれば難所 の手前で行軍が滞り、 戦闘部隊が無理にその難所を越えて深入りすると分断されてしまう道。 後続部隊との接続を確保しようとすると立ち止まると捕虜にされてしまう〕 (七)敵軍には、それを攻撃してはならない敵軍がある。 〔兵力上は、正面攻撃によって撃破できる目算が充分立っても、 他にもっと巧妙な手があって、労せずに撃破できる可能性のある軍〕 (八)城には、それを攻略してはならない城がある。 〔,兵力上は充分攻め落とせるが、そこから先の前進に利益なく、守りきれない ,力攻してみても攻略できそうにもなく、前方で勝利を収めれば自然に降伏し、 勝利できなくても後方で自軍の害とならない城〕 (九)土地には、そこを争奪してはならない土地がある。 〔水や食料が得られない劣悪な環境で、奪い取ってみても長くは占領維持できない〕 君命には、それを受諾してはならない君命がある。だから、将軍の中で九変(九種の応変の対処法)が持つ利益に通暁する者こそは、軍隊の運用法を真にわきまえているのである。 将軍でありながら九変の利益に精通しない者は、たとえ戦場の地形を知ってはいても、その地形がもたらす利益をわがものにすることができない。 軍隊を統率していながら九変の術策を身につけていないようでは、五種の地形への対処法が持つ利益を観念的に知ってはいても、いざその場になると兵士たちの力を存分に駆使することはできない。 四 〈利と害の両面で考える〉 こうしたわけで、智者の思慮は、ある一つの事柄を 是の故に、智者の慮は必らず利考える場合にも、必ず利と害との両面をつき混ぜて洞害に雑,まじ,う。利に雑りて而察する。利益になる事柄に害の側面をも交えて考える,すなわ,ち務め信なるべきなり。ならば、その事業は必ずねらいどおりに達成できる。害に雑りて而ち患い解くべきな害となる事柄に利益の側面も合わせて計り考えるなり。 らば、その心配も消すことができる。 五 そうしたわけで、諸侯の意思を自国の意図の前に屈 是の故に、諸侯を屈する者は害服させるには、その害悪ばかりを強調する。諸侯を使 を以てし、諸侯を役,えき,する役するには、損害を顧みないほど魅力的な事業に乗り 者は業を以てし、諸侯を趨,はし,出させる。諸侯を奔走させるには、害の側面を隠して らす者は利を以てす。 利益ばかりを示す手を使う。 六 そこで、戦争の原則としては、敵がやってこないこ とをあてにするのではなく、いつやってきてもいいよ 故に用兵の法は、其の来たらざうな備えがこちらにあることをあてにする。敵が攻 らるを恃,たの,むこと無く、吾撃してこないことをあてにするのではなく、攻撃でき れの以て待つ有ることを恃むなないような態勢がこちらにあることをあてにするの り。其の攻めざるを恃むこと無く、である。 吾が攻むべからざる所あるを恃む なり。 七 〈指揮官五つの危険〉 故に将に五危あり。必死は殺さ そこで、将軍には五つの危険がつきまとう。 れ、必生は虜にされ、忿速は侮ら(一)決死の勇気だけで思慮に欠ける者は、殺されれ、廉白は辱められ、愛民は煩さる。 る。凡そ此の五つの者は将の過ち(二)生き延びることしか頭になく勇気に欠ける者なり、用兵の災いなり。軍を覆しは、捕虜にされる。 将を殺すは必らず五危を以てす。(三)短気で怒りっぽい者は、侮辱されて計略に引察せざるべからざるなり。 っかかる。 (四)清廉潔白で名誉を重んじる者は、侮辱されて 罠に陥る。 (五)兵士をいたわる人情の深い者は、兵士の世話 に苦労が絶えない。 およそこれら五つは、将軍としての過失であり、軍 隊を運営する上で災害をもたらす事柄である。軍隊を 滅亡させ、将軍を敗死させる原因は、必ずこれら五つ の危険のどれかにある。充分に明察しなければならな い。 九 行軍篇〈敵情を見抜く〉 九 行軍篇〈敵情を見抜く〉 一 〈行軍の秘訣〉 孫子曰わく、 およそさまざまな地形の上に軍隊を配置し、敵情を 凡そ軍を処,お,き敵を相,み,偵察するのに、 ること。 山を絶つには谷に依り、生を視(一)山を越えるには谷沿いに進み、高みを見つけて高きに処り、隆,たか,き戦いては高地に休息場所を占める。戦闘に入る際には高地ては登ること無かれ。此れ山に処から攻め下るようにして、決して自軍より高い地点をるの軍なり。 占拠する敵に向かって攻め上がったりしてはならな 水を絶てば必らず水に遠ざかい。これが山岳地帯にいる軍隊についての注意であり、客 水を絶ちて来たらば、こる。 れを水の内に迎うる勿く、半ば済 ,わた,らしめてこれを撃つは利(二)川を渡り終えたならば、必ずその川から遠ざかなり。戦わんと欲する者は、水にる。敵が川を渡って攻撃してきたときには、敵軍がま附きて客を迎うること勿かれ。生だ川の中にいる間に迎え撃ったりせず、敵兵の半数をを視て高きに処り、水流を迎うる渡らせておいてから攻撃するのが有利な戦法である。こと無かれ、此れ水上に処るの軍渡河してくる敵と戦闘しようとする場合は、川岸までなり。 出かけて敵を攻撃してはならない。これが河川のほと 斥沢を絶つには、惟だ亟,すみりにいる軍隊についての注意である。 や,かに去って留まること無かれ。 若し軍を斥沢の中に交うれば、必(三)沼沢地を越える場合には、素早く通過するよらず水草に依りて衆樹を背,はい,うにして、そこで休息したりしてはならない。もし敵にせよ。此れ斥沢に処るの軍なり。 と遭遇し、沼沢地の中で戦う事態になったならば、飲 平陸には易に処りて而して高き料水と飼料の草がある近辺を占めて、森林を背に配を右背にし、死を前にして生を後して布陣せよ。これが沼沢地にいる軍隊についての注にせよ。此れ平陸に処るの軍なり。 意である。 凡そ此の四軍の利は、黄帝の四 帝に勝ちし所以なり。 (四)平地では、足場のよい平坦な場所を占めて、丘 陵を右後方におき、低地を前方に、高みを後方に配し二 て布陣せよ。これが平地にいる軍隊についての注意で ある。 凡そ軍は高きを好みて下,ひく, きを悪,にく,み、陽を貴びて陰 およそこの四種の地勢にいる軍隊に関する戦術的を賎しむ。生を養いて実に処り、利益こそは、黄帝が四人の帝王に打ち勝った原因なの軍に百疾なきは、是れを必勝と謂である。 う。丘陵堤防(堤はこざとへん) には必らず其の陽に処りて而して およそ、軍隊をとどめるには、 これを右背にす。此れ兵の利、地 の助けなり。 高地はよいが低地は悪い。 日当たりのよいところがすぐれるが、日当たり三 の悪い所は劣る。 上に雨ふりて水沫至らば、渉ら 健康に留意して、水や草の豊富な場所におり、軍隊 んと欲する者は、其の定まるを待に種々の疾病が起こらないのが、必勝の軍である。 て。 丘陵や堤防などでは、必ずその東南にいて、それが 背後と右手となるようにする。これが戦争の利益にな四 ることで、地形の援助である。 凡そ地に絶澗?天井,せい,? 上流が雨で、川が泡だって流れているときは、洪水天牢?天羅?天陥?天隙あらば、の恐れがあるから、もし渡ろうとするなら、その流れ必らず亟かにこれを去りて、近づ くこと勿かれ。吾れはこれに遠ざの落ち着くのを待ってからにせよ。 かり、敵にはこれに近づかしめよ。 およそ地形に、絶壁の谷間(絶澗)?自然の井戸(天吾れはこれを迎え、敵にはこれに井)?自然の牢獄(天牢)?自然の取り網(天羅)?背せしめよ。 自然の陥し穴(天陥)?自然のすきま(天隙)のあ るときは、必ず速くそこを立ち去って、近づいてはな五 らない。こちらではそこから遠ざかって、敵にはそこ 軍の傍に険阻?こう,水黄,井?に近づくように仕向ける。こちらではその方に向か 葭葦,かい,?山林?えい,艸,い、敵はそこが背後になるように仕向ける。 翳,薈,わい,ある者は、必らず 軍隊の近くに、険しい地形?池?窪地?芦の原?山謹んでこれを覆索せよ、此れ伏姦林?草木の繁茂したところがあるときには、必ず慎重の処る所なり。 に繰り返して捜索せよ。これらは伏兵や偵察隊のいる 六 場所である。 敵近くして静かなる者は其の険 敵が自軍の近くにいながら平然と静まり返ってい を恃むなり。遠くして戦いを挑むるのは、彼らが占める地形の険しさを頼りにしている 者は人の進むを欲するなり。其ののである。 居る所の易なる者は利するなり。 敵が自軍から遠く離れているにもかかわらず、戦い衆樹の動く者は来たるなり。衆草を仕掛けて、自軍の進撃を願うのは、彼らの戦列を敷の障多き者は疑なり。鳥の起つ者 は伏なり。獣の駭,おどろ,く者いている場所が平坦で有利だからである。 は覆,ふう,なり。塵高くして鋭 多数の木立がざわめき揺らぐのは、敵軍が森林の中き者は車の来たるなり。卑くしてを移動して進軍してくる。 広き者は徒の来たるなり。散じて 条達する者は樵採なり。少なくし あちこちに草を結んで覆い被せてあるのは、伏兵のて往来する者は軍を営むなり。 存在を疑わせようとしている。 七 草むらから鳥が飛び立つのは、伏兵が散開してい る。 辞の卑,ひく,くして備えを益 す者は進むなり。辞の強くして進 獣が驚いて走り出てくるのは、森林に潜む敵軍の駆する者は退くなり。約なくして奇襲攻撃である。 和を請う者は謀なり。軽車の先ず 出でて其の側に居る者は陳するな 砂塵が高く舞い上がって、筋の先端がとがっていり。奔走して兵を陳,つら,ぬる 者は期するなり。半進半退する者るのは、戦車部隊が進撃してくる。 は誘うなり。 砂塵が低く垂れ込めて、一面に広がっているのは、 歩兵部隊が進撃してくる。 八 砂塵があちらこちらに分散して、細長く筋を引く 杖,つえつ,きて立つ者は飢う るなり。汲みて先ず飲む者は渇すのは、薪を集めている。 るなり。利を見て進まざる者は労 砂塵の量が少なくて行ったり来たりするのは、設,つか,るるなり。鳥の集まる者営隊が軍営を張る作業をしている。 は虚しきなり。夜呼ぶ者は恐るる なり。軍の擾,みだ,るる者は将 敵の軍使の口上がへりくだっていて、防備が増強の重からざるなり。旌旗の動く者されているのは、進撃の下工作。 は乱るるなり。吏の怒る者は倦み たるなり。馬に粟,ぞく,して肉 敵の軍使の口上が強硬で、先頭部隊が侵攻してく食し、軍に懸ふ,卸,卩,瓦,なるのは、退却の下工作。 くして其の舎に返らざる者は窮寇 なり。諄々翕々,じゅんじゅんき 隊列から軽戦車が真っ先に抜け出して、敵軍の両ゅうきゅう,として徐,おもむろ,側を警戒しているのは、行軍隊形を解いて陣立てをに人と言,かた,る者は衆を失うしている。 なり。数,しばしば,賞する者は 窘,くる,しむなり。数罰する者 敵の急使が、窮迫した事情もないのに和睦を懇願しは困,つか,るるなり。先きに暴てくるのは、油断させようとする陰謀である。 にして後に其の衆を畏るる者は不 精の至りなり。来たりて委謝する 伝令があわただしく走り回って、各部隊を整列させ者は休息を欲するなり。兵怒りてているのは、会戦を決意している。 相い迎え、久しくして合わず、又 た解き去らざるは、必らず謹しみ 敵の部隊が中途半端に進撃してくるのは、自軍を誘 てこれを察せよ。 い出そうとしている。 九 兵士が杖をついて立っているのは、その軍が飢えて 弱っている。 兵は多きを益ありとするに非ざ るなり。惟だ武進することなく、 水くみが水をくんで真っ先に飲むのは、その軍が飲 力を併わせて敵を料,はか,らば、料に困っている。 以て人を取るに足らんのみ。夫れ 惟だ慮,おもんぱか,り無くして 利益を認めながら進撃してこないのは、疲労してい 敵を易,あなど,る者は、必らずる。 人に擒にせらる。卒未だ親附せざ るに而もこれを罰すれば、則ち服 鳥がたくさん止まっているのは、その陣所に人がい せず。服せざれば則ち用い難きなない。 り。卒已,すで,に親附せるに而 夜に呼び叫ぶ声のするのは、その軍が臆病で怖がっも罰行なわれざれば、則ち用うべている。 からざるなり。故にこれを合する に文を以てし、これを斉,ととの, うるに武を以てする、是れを必取 軍営の騒がしいのは、将軍に威厳がない。 と謂う。令 素,もと,より行な 旗が動揺しているのは、その備えが乱れた。 われて、以て其の民を教うれば則 ち民服す。令 素より行なわれず 役人が腹を立てているのは、その軍がくたびれていして、以て其の民を教うれば則ち る。 民服せず。令の素より信なる者は 衆と相い得るなり。 馬に兵糧米を食べさせ、兵士に肉食させ、軍の鍋 釜の類はみな打ち壊して、その幕舎に帰ろうともし ないのは、行きづまって死にものぐるいになった敵 である。 ねんごろにおずおずと物静かに兵士たちと話をし ているのは、みんなの心が離れている。 しきりに賞を与えているのは、その軍の士気がふる わなくて困っている。 しきりに罰しているのは、その軍が疲れている。 はじめは乱暴に扱っておきながら、あとにはその兵 士たちの離反を恐れるのは、考えの行き届かない極 みだ。 わざわざやってきて贈り物を捧げて謝るというの は、しばらく軍を休めたい。 敵軍がいきり立って向かってきながら、しばらくしても合戦せず、また撤退もしないのは、必ず慎重に観察せよ。 戦争は兵員が多いほどよいというものではない。ただ、猛進しないようにして、わが戦力を集中して敵情を考えはかっていくなら、十分に勝利を収めることができよう。 そもそも、よく考えることもしないで敵を侮っている者は、きっと敵の捕虜にされるであろう。 兵士たちがまだ将軍に親しみなついていないのに 懲罰を行なうと、彼らは心服しない。心服しないと働かせにくい。ところが、兵士たちがもう親しみなついているのに懲罰を行なわないでいると、威令がふるわず、彼らを働かせることはできない。だから、軍隊では御徳でなつけ、刑罰で統制する。これを必勝の軍と いう。 法令がふだんからよく守られていて、それで兵士 たちに命令するのなら、兵士たちは服従する。法令が ふだんからよく守られていないのに、それで兵士たち に命令するのでは、兵士たちは服従しない。法令がふ だんから誠実なものは、民衆とぴったり心が一つにな っているのである。 十 地形篇〈六種の地形をどう利用するか〉 十 地形篇〈六種の地形をどう利用するか〉 一 〈地形に適した戦術をとる〉 孫子曰わく、 戦場の地形には、 地形には、通ずる者あり、挂,さ また,ぐる者あり、支,わか,る ,:四方に広く通じ開けている る者あり、隘,せま,き者あり、 険なる者あり、遠き者あり。 ,:途中に行軍が渋滞する難所を控えている 我れ以て往くべく疲れ以て来た るべきは曰,すなわ,ち通ずるな ,:脇道が分岐している り。通ずる形には、先ず高陽に居 り、糧道を利して以て戦えば、則 ,:道幅が急にせばまっている ち利あり。 以て往くべきも以て返り難きは ,:高く険しい 曰ち挂ぐるなり。挂ぐる形には、 敵に備え無ければ出でてこれに勝 ,:両軍の陣地が遠くかけ離れている ち、敵若し備え有れば出でて勝た ず、以て返り難くして不利なり。 ものがある。 我れ出でて不利、彼れも出でて 不利なるは、曰ち支るるなり。支(一)わが方からも自由に行けるし、敵方からも自由 るる形には、敵 我れを利すと雖にこれるのは「通じ開けている」地形と呼ぶ。通じ開 も、我れ出ずること無かれ。引きけた地形では、敵軍よりも先に高地の南側に陣取っ てこれを去り、敵をして半ば出でて、食料の補給路を有利に確保する形で戦えば、有利 しめてこれを撃つは利なり。 になる。 隘き形には、我れ先ずこれに居(二)その道に沿って進むことは何とかできても、引れば、必らずこれを盈たして以てき返すのが難しいのは、「途中に引っかかる難所があ敵を待つ。若し敵先ずこれに居り、る」地形と呼ぶ。難所を控えた地形では、難所の向こ盈つれば而ち従うこと勿かれ、盈う側に敵の防御陣地がない場合には、難所を越えて出たざれば而ちこれに従え。 撃して勝てる。もし、敵の防御陣地が存在する場合に 険なる形には、我れ先ずこれには、出撃しても勝てず、再び難所を越えて引き返すの居れば、必ず高陽に居りて以て敵も難しくなって、不利である。 を待つ。若し敵先ずこれに居れば、 引きてこれを去りて従うこと勿か(三)わが方が先に進出しても不利になるし、敵方がれ。 先に進出しても不利になるのは、「脇道が分岐してい る」地形と呼ぶ。脇道が枝分かれしている地形では、 遠き形には、勢い均しければ以たとえ敵が自軍に進出の利益を示して誘っても、それて戦いを挑み難く、戦えば而ち不につられてわが方から先に進出しない。軍を後退させ利なり。 て分岐点を離れ、逆に敵軍の半数を、分岐点をすぎて 凡そこの六者は地の道なり。将 の至任にして察せざるべからざる進出させておいてから攻撃するのが有利である。 なり。 (四)両側から岩壁が張り出して、急に道幅がせばま っている地形では、わが方が先にその地点を占拠して二 いれば、その隘路上に必ず兵力を密集させておいてか 故に、兵には、走る者あり、弛ら、敵の来攻を待ち受けよ。もし、敵が先にその地点 む者あり、陥る者あり、崩るる者を占拠していて、しかも敵の兵力がその隘路上に隙間 あり、乱るる者あり、北,に,ぐなく密集している場合には、そこへ攻めかかってはな る者あり。凡そ此の六者は天の災らない。たとえ敵が先に占領していても、その隘路上 に非ず、将の過ちなり。 を、敵の兵力が埋めつくしていない場合には、攻めか かれ。 夫れ勢い均しきとき、一を以て 十を撃つは曰ち走るなり。 (五)高く険しい地形では、わが方が先にその地点を 占拠している場合には、必ず高地の南側に陣取った上 卒の強くして吏の弱気は曰ち弛むで、敵の来攻を待ち受けよ。もし、敵の側が先にその なり。 地点を占拠している場合には、軍を後退させてその場 を立ち去り、そこの敵軍に攻めかかってはならない。 吏の強くして卒の弱きは曰ち陥る なり。 (六)双方の陣地が遠く隔たっている地形では、戦勢 が互角な場合は、自分の方から出陣して先に戦いを仕 大吏怒りて服せず、敵に遭えばう掛けるのは困難であり、無理に出かけていって戦闘す ら,對心,みて自ら戦い、将は其れば、不利になる。 の能を知らざるは、曰ち崩るるな り。 およそこれら六つの事柄は、地形についての道理で ある。将軍の最も重大な任務であるから、明察しなけ 将の弱くして敵ならず、教道も明ればならない。 らかならずして、吏卒は常なく兵 を陳,つら,ぬること縦横,しょ そこで、軍隊には うおう,なるは、曰ち乱るるなり。 ,:逃亡する 将 敵を料ること能わず、小を 以て衆に合い、弱を以て強を撃ち、 ,:ゆるむ 兵に選鋒なきは、曰ち北ぐるなり。 ,:落ち込む 凡そこの六者は敗の道なり。将 の至任にして察せざるべからざる ,:崩れる なり。 ,:乱れる ,:負けて逃げる のがある。すべてこれら六つのことは、自然の災害で はなくて、将軍たる者の過失によるのである。 (一)そもそも軍の威力がどちらも等しいときに、十 倍も多い敵を攻撃するのは、戦うまでもなく逃げ散ら せる。 (二)兵士たちの実力が強くて、取り締まる役人の 弱いのは、軍をゆるませる。 (三)取締りの役人が強くて、兵士の弱いのは、軍を 落ち込ませる。 (四)役人の頭が怒って将軍の命令に服従せず、敵に 遭遇しても恨み心を抱いて、自分勝手な戦いをし、将 軍はまた彼の能力を知らないというのは、軍を突き崩 す。 (五)将軍が軟弱で厳しさがなく、軍令もはっきり しないで、役人兵士たちにもきまりがなく、陣立ても デタラメなのは、乱れさせる。 (六)将軍が敵情を考えはかることができず、小勢で 大勢の敵と合戦し、弱勢で強い敵を攻撃して、軍隊の 先鋒に選びすぐった勇士もいないのは、負けて逃げさ せる。 すべてこれら六つのことは、敗北についての道理で ある。将軍の最も重要な責務として充分に考えなけれ ばならないことである。 三 〈指導者の理想像〉 そもそも土地の形状は、軍事行動の補助要因であ 夫れ地形は兵の助けなり。敵をる。敵情をはかり考えては勝利の形を策定しつつ、地料って勝を制し、険夷?遠近を計形が険しいか平坦か、遠いか近いかを検討して、勝利るは、上将の道なり。此れを知り実現の補助手段に利用していくのが、全軍を指揮するて戦いを用,おこ,なう者は必ら上将軍の踏むべき行動基準である。こうしたやり方をず勝ち、此れを知らずして戦いを熟知して戦闘形式を用いる者は必ず勝つが、こうした用なう者は必らず敗る。故に戦道やり方を自覚せずに戦闘形式を用いる者は、必ず敗れ必らず勝たば、主は戦う無かれと 曰うとも必らず戦いて可なり。戦る。 道勝たずんば、主は必ず戦えと曰 そこで、戦闘の道理として自軍に絶対の勝算があるうとも戦う無くして可なり。故にときには、たとえ主君が戦闘してはならないと命じて進んで名を求めず、退いて罪を避 けず、唯だ民を是れ保ちて而して も、ためらわず戦闘してかまわない。 利の主に合うは、国の宝なり。 戦闘の道理として勝算がないときには、たとえ主君四 が絶対に戦闘せよと命じても、戦闘しなくてかまわな 卒を視ること嬰児の如し、故にい。 これと深谿に赴むくべし。卒を視 したがって、君命を振り切って戦闘に突き進むときること愛子の如し、故にこれと倶でも、決して功名心からそうするのではない。君命にに死すべし。厚くして使うこと能背いて戦闘を避けて退却するときでも、決して誅罰をわず、愛して令すること能わず、まぬがれようとせずに、ひたすら民衆の生命を保全し乱れて治むること能わざれば、譬ながら、しかも結果的にそうした行動が君主の利益にえば驕子の若く、用うべからざるもかなう。このような将軍こそは、国家の財宝である。 なり。 将軍が兵士を治めていくのに、兵士たちを赤ん坊の五 ように見て、万事に気をつけていたわっていくと、そ 吾が卒の以て撃つべきを知るれによって兵士たちと一緒に深い谷底のような危険 も、而も敵の撃つべからざるを知な土地にも行けるようになる。 らざるは、勝の半ばなり。敵の撃 兵士たちをかわいいわが子のように見て、深い愛情つべきを知るも、而も吾が卒の以で接していくと、それによって兵士たちと生死をともて撃つべからざるを知らざるは、 勝の半ばなり。敵の撃つべきを知にできるようになる。 り吾が卒の以て撃つべきを知る しかし、もし手厚くするだけで仕事をさせることがも、而も地形の以て戦うべからざできず、かわいがるばかりで命令することもできず、るを知らざるは、勝の半ばなり。デタラメをしていてもそれを止めることができない故に兵を知る者は、動いて迷わず、のでは、たとえてみればおごりたかぶった子供のよう挙げて窮せず。 で、ものの用にたたない。 故に曰わく、彼れを知りて己れ 味方の兵士に、敵を攻撃して勝利を収められる力がを知れば、勝 乃ち殆,あや,うあることがわかっても、敵の方に備えがあって、攻撃からず。地を知りて天を知れば、してはならない状況があることを知っていなければ、勝 乃ち全うすべし。 必ず勝つとは限らない。 敵に隙があって、攻撃できる状況があることがわか っても、味方の兵士が攻撃をかけるのに十分でないこ とがわかっていなければ、必ず勝つとは限らない。 敵に隙があって攻撃できることがわかり、味方の兵 士にも敵を攻撃する力のあることはわかっても、土地 のありさまが戦ってはならない状況であることを知 るのでなければ、必ず勝つとは限らない。 だから、戦争のことに通じた人は、敵?味方?土地 のことをわかった上で行動を起こすから、軍を動かし て迷いがなく、合戦しても苦しむことがない。だから、 「敵情を知って、味方の事情も知っておれば、そこで 勝利に揺るぎがない。土地のことを知って、自然界の めぐりのことも知っておれば、そこでいつでも勝て る」といわれるのである。 十一 九地篇〈脱兎のごとく進攻せよ〉 十一 九地篇〈脱兎のごとく進攻せよ〉 一 〈九種の地勢とその戦術〉 孫子曰わく、 土地の形状とは、軍事の補助要因である。そこで軍 兵を用うるには、散地あり、軽を運用する方法には、 地あり、争地あり、交地あり、衢 ,く,地あり、重地あり、ひ,土 ,:散地(軍の逃げ去る土地) 己,地あり、囲地あり、死地あり。 諸侯自ら其の地に戦う者を、散 ,:軽地(軍の浮き立つ土地) 地と為す。 人の地に入りて深からざる者 ,:争地(敵と奪い合う土地) を、軽地と為す。 我れ得たるも亦た利、彼得るも ,:交地(往来の便利な土地) 亦た利なる者を、争地と為す。 我れ以て往くべく、彼れ以て来 ,:衢,く,地(四通八達の中心地) たるべき者を、交地と為す。 諸侯の地四属し、先ず至って天下 ,:重地(重要な土地) の衆を得る者を、衢地と為す。 人の地に入ること深く、城邑に背 ,:泛,はん,地(軍を進めにくい土地) くこと多き者を、重地と為す。 山林?険阻?沮沢、凡そ行き難き,:囲地(囲まれた土地) の道なる者を、,土己,地と為す。 ,:死地(死すべき土地) 由りて入る所のもの隘く、従っ て帰る所のもの迂にして、彼れ寡がある。 にして以て吾の衆を撃つべき者 を、囲地と為す。 (一)諸侯が自国の領内で戦うのが、散地である。 疾戦すれば則ち存し、疾戦せざ れば則ち亡ぶ者を、死地と為す。 (二)敵国内に侵入しても、まだ深入りしていないの 是の故に、散地には則ち戦うこが、軽地である。 と無く、軽地には則ち止まること 無く、争地には則ち攻むること無(三)自軍が奪い取れば味方に有利となり、敵軍が奪く、交地には則ち絶つこと無く、い取れば敵に有利になるのが、争地である。 衢地には則ち交を合わせ、重地に は則ち掠め、,土己,地には則ち(四)自軍も自由に行くことができ、敵軍も自在に来行き、囲地には則ち謀り、死地にることができるのが、交地である。 は則ち戦う。 (五)諸侯の領地が三方に接続していて、そこに先着 すれば、諸国とよしみを通じて天下の人々の支援が得 二 られるのが、衢地である。 古えの善く兵を用うる者は、能(六)敵国奥深く侵入し、多数の敵城を後方に背負っ く敵人をして前後相い及ばず、衆ているのが、重地である。 寡相い恃まず、貴賎相い救わず、(七)山林や沼沢地を踏み越えるなど、およそ進軍が上下相い扶けず、卒離れて集まら ず、兵合して斉わざらしむ。利に難渋する経路であるのが、泛地である。 合えば而ち動き、利に合わざれば(八)それを経由して中へ入り込む通路は狭く、それ而ち止まる。 を伝ってそこから引き返す通路は曲がりくねって遠 く、敵が寡兵で味方の大部隊を攻撃できるのが、囲地三 である。 敢えて問う、敵 衆整にして将(九)突撃が迅速であれば生き延びるが、突撃が遅れ,まさ,に来たらんとす。これをればたちまち全滅するのが、死地である。 待つこと若何。 曰わく、先ず其の愛する所を奪 したがって、 わば、則ち聴かん。兵の情は速を ,:散地では、戦闘してはならない。 主とす。人の及ばざるに乗じて不 虞の道に由り、其の戒めざる所を ,:軽地では、ぐずぐずしてはならない。 攻むるなりと。 ,:争地では、敵に先にそこを占拠された場合には攻 めかかってはならない。 ,:交地では、全軍の隊列を切り離してはならない。 ,:衢地では、諸侯たちと親交を結ぶ。 ,:重地では、敵情を巻いたりせずにすばやく通り過 ぎる。 ,:泛地では、軍を宿営させずに先へ進める。 ,:囲地では、潰走の危険を防ぐ策謀をめぐらせる。 ,:死地では、間髪をいれずに死闘する。 昔の戦争の達人は、敵軍に前軍と後軍との連絡がで きないようにさせ、大部隊と小部隊とが助け合えない ようにさせ、身分の高い者と低い者とが互いに救い合 わず、上下の者が互いに助け合わないようにさせ、兵 士たちが離散して集合せず、集合しても整わないよう にさせた。こうして、味方に有利な状況になれば行動 を起こし、有利にならなければまたの機会を待ったの である。 ,:敵が秩序だった大軍でこちらを攻めようとしてい るときには、どのようにしてそれに対処したらよかろ うか。 ,:相手に先んじて、敵の大切にしているものを奪取 すれば、敵はこちらの思いどおりになるだろう。戦争 の実状は迅速が第一である。敵の準備中を利用して、 思いがけない方法を使い、敵の備えのない所を攻撃す ることだ。 四 〈敵国深く進入せよ〉 凡そ客たるの道、深く入れば則 およそ、敵国内に進行する方法としては、 ち専らにして主人克たず。饒野に 徹底的に奥深くまで進攻してしまえば、兵士が結束掠むれば三軍も食に足る。謹め養するから、散地で戦う迎撃軍は対抗できない。 いて労すること勿く、気を併わせ 力を積み、兵を運らして計謀し、 肥沃な土地で掠奪すれば、全軍の食料も充足する。 測るべからざるを為し、これを往 く所なきに投ずれば、死すとも且 慎重に兵士たちを休養させては疲労させないよう,は,た北,に,げず。士人 力にし、士気を一つにまとめ、戦力を蓄え、複雑に軍をを尽す、勝焉んぞ得ざらんや。兵移動させては策謀をめぐらせて、自軍の兵士たちが目士は甚だしく陥れば則ち懼れず、的地を推測できないように細工しながら、最後に軍を往く所なければ則ち固く、深く入八方ふさがりの状況に投げ込めば、兵士たちは死んでれば則ち拘し、已むを得ざれば則も敗走したりはしない。どうして死にものぐるいの勇ち闘う。是の故に其の兵、修めず戦が実現されないことがあろうか。士卒はともに死力して戒め、求めずして得、約せずを尽くす。 して親しみ、令せずして信なり。 祥を禁じ疑いを去らば、死に至る 兵士たちは、あまりにも危険な状況にはまりこんでまで之,ゆ,く所なし。吾が士にしまうと、もはや危険を恐れなくなる。 余財なきも貨を悪,にく,むには どこにも行き場がなくなってしまうと、決死の覚悟非ざるなり。余命なきも寿を悪むを固める。 には非ざるなり。令の発するの日、 士卒の坐する者は涕,なみだ, 襟 敵国内に深く入り込んでしまうと、一致団結する。 を霑,うるお,し、偃,えん,臥 する者は涕 頤,あご,に交わる。 逃げ場のない窮地に追いつめられてしまうと、奮戦これを往く所なきに投ずれば、力闘する。 諸?かい,歳リ,の勇なり。 だから、そうした絶体絶命の外征軍は、ことさらに五 指揮官が調教しなくても、自分たちで進んで戒め合 う。 故に善く兵を用うる者は、譬え ば率然の如し。率然とは常山の蛇 なり。其の首を撃てば則ち尾至り、 口に出して要求しなくても、期待通りに動く。 其の尾を撃てば則ち首至り、其の いさかいを禁ずる約束を交わさせなくても、自主的中を撃てば則ち首尾倶に至る。 に親しみ合う。 敢えて問う、兵は率然の如くな 軍令の罰則で脅かさなくても、任務を忠実に果たらしむべきか。 す。 曰わく可なり。夫れ呉人と越人 軍隊内での占いごとを禁止して、僥倖が訪れて生還との相い悪むや、其の舟を同じくできるのではないかとの疑心を取り除くならば、戦死して済,わた,りて風に遭うに当するまで決して逃げ出したりはしない。 たりては、其の相い救うや左右の 手の如し。是の故に馬を方,つな, わが軍の兵士たちが余分な財貨を持ち歩かないかぎて輪を埋むるとも、未だ恃むにらといって、それは何も財貨を嫌ってのことではな足らざるなり。勇を斉,ととの,い。今ここで死ぬ以外に他の死に方を考えないからとえて一の若くにするは政の道ないって、それは何も長生きを嫌ってのことではない。 り。剛柔皆な得るは地の理なり。 故に善く兵を用うる者、手を攜,た 決戦の命令が発せられた日には、兵士たちの座り込ずさ,うるが若くにして一なるは、んでいる者は、ぽたぽたとこぼれ落ちる涙のしずくで人をして已むを得ざらしむるな襟をぬらし、横たわっている者は、両目からあふれ出り。 る涙の筋が、頬を伝ってあごの先に結ぶ。こうした決 死の兵士たちを、どこにも行き場のない窮地に投入す六 れば、全員が勇敢になるのである。 将軍の事は、静かにして以て幽 そこで、戦争の上手な人は、たとえば率然,そつぜ,ふか,く、正しくして以て治まん,のようなものである。率然というのは、常山にいる。能く士卒の耳目を愚にして、る蛇のことである。その頭を撃つと尾が助けに来るこれをして知ること無からしむ。し、その尾を撃つと頭が助けに来るし、その腹を攻撃其の事を易,か,え、其の謀を革すると頭と尾とで一緒にかかってくる。 ,あらた,め、人をして識ること 無からしむ。其の居を易え其の途,:軍隊はこの率然のようにすることができるか。 を迂にし、人をして慮ることを得 ざらしむ。帥,ひき,いてこれと,:できる。 期すれば高きに登りて其の梯を去 るが如く、深く諸侯の地に入りて そもそも、呉の国の人と越の国の人とは互いに憎み其の機を発すれば群羊を駆るが若あう仲であるが、それでも一緒に同じ船に乗って(呉し。駆られて往き、駆られて来た越同舟)、川を渡り、途中で大風にあった場合には、るも、之,ゆ,く所を知る莫し。彼らは左手と右手との関係のように密接に助け合う三軍の衆を聚めてこれを険に投ずものである。 るは、此れ将軍の事なり。九地の 変、屈伸の利、人情の利は、察せ こういうわけで、馬をつなぎ止め、車輪を土に埋めざるべからざるなり。 て陣固めをしてみても、決して充分に頼りになるもの ではない。軍隊を、勇者も臆病者も等しく勇敢に整え七 るのは、その治め方によるのである。剛強な者も柔弱 な者も等しく充分な働きをするのは、土地の形勢の道 凡そ客たるの道は、深ければ則理によるものである。 ち専らに、浅ければ則ち散ず。 だから、戦争の上手な人が、まるで手をつないでい るかのように軍隊を一体にさせ、率然のようにさせる 国を去り境を越えて師ある者はのは、兵士たちを、戦うほかにどうしようもないよう絶地なり。四達する者は衢地なり。 入ること深き者は重地なり。入るな条件に置くからである。 こと浅き者は軽地なり。背は固に将軍たる者の仕事は、もの静かで奥深く、正大でよくして前は隘なる者は囲地なり。往整っている。 く所なき者は死地なり。 士卒の耳目をうまくくらまして、軍の計画を知らせ 是の故に散地には吾れ将,まさ,ないようにする。 に其の志を一にせんとす。軽地に は吾れ将にこれをして属,つづ,そのしわざをさまざまに変え、その策謀を更新して、かしめんとす。争地には吾れ将に人々に気づかれないようにする。 其の後を趨,うなが,さんとす。 交地には吾れ将に其の守りを謹しその駐屯地を転々と変え、その行路を迂回してとっまんとす。衢地には吾れ将に其のて、人々に推測されないようにする。 結びを固くせんとす。重地には吾 れ将に其の食を継がんとす。,土 軍隊を統率して任務を与えるときには、高いところ己,地には吾れ将に其の塗,みち,へ登らせてからその梯子を取るように、戻りたくてもを進めんとす。囲地には吾れ将に戻れないようにする。 其の闕,けつ,を塞がんとす。死 地には吾れ将にこれに示すに活 深く外国の土地に入り込んで決戦を起こすときに,い,きざるを以てせんとす。 は、羊の群れを追いやるように、兵士たちを従順にす 故に兵の情は、囲まるれば則ちる。 禦ぎ、已むを得ざれば則ち闘い、 過ぐれば則ち従う。 追いやられてあちこちと往来するが、どこに向かっ ているかは誰にもわからない。全軍の大部隊を集め八 て、そのすべてを決死の意気込みにするような危険な 土地に投入する。それが将軍たる者の仕事である。 是の故に諸侯の謀を知らざる者 は、予め交わること能わず。山林? 九とおりの土地の形勢に応じた変化、状況によって険阻?沮沢の形を知らざる者は、軍を屈伸させることの利害、そして人情の自然な道理軍を行,や,ること能わず。郷導については、充分に考えなければならない。 を用いざる者は、地の利を得るこ と能わず。此の三者、一を知らざ およそ、敵国に進撃した場合のやり方としては、深れば、覇王の兵には非ざるなり。く入り込めば団結するが、浅ければ逃げ去るものであ夫れ覇王の兵、大国を伐つときはる。 則ち其の衆 聚まることを得ず、 威 敵に加わるときは則ち其の交 ,:本国を去り、国境を越えて軍を進めた所は、絶 合することを得ず。是の故に天下地である。 の交を争わず、天下の権を養わず、 己れの私を信,の,べて、威は敵 ,:絶地の中で、四方に通ずる中心地が、衢地であ に加わる。故に其の城は抜くべく、 其の国は堕,やぶ,るべし。無法る。 の賞を施し、無政の令を懸くれば、 ,:深く進入した所が、重地である。 三軍の衆を犯,もち,うること一 人を使うが若し。これを犯うるに ,:少し入っただけの所が、軽地である。 事を以てして、告ぐるに言を以て すること勿かれ。これを亡地に投 ,:背後が険しくて、前方が狭いのが、囲地である。 じて然る後に存し、これを死地に 陥れて然る後に生く。夫れ衆は害 ,:行き場のないのが死地である。 に陥りて然る後に能く勝敗を為 す。 散地ならば、兵士たちが離散しやすいから、自分は 兵士たちの心を統一しようとする。 軽地ならば、軍がうわついているから、自分は軍隊 を離れないように連続させようとする。 争地ならば、先に得た者が有利であるから、自分は 遅れている部隊を急がせようとする。 交地ならば、通じ開けているから、自分は守備を厳 重にしようとする。 衢地ならば、諸侯たちの中心地であるから、自分は 同盟を固めようとする。 重地ならば、敵地の奥深くであるから、自分は軍の 食料を絶やさないようにする。 泛地ならば、行動が困難であるから、早く行き過ぎ ようとする。 囲地ならば、逃げ道が開けられているものであるか ら、戦意を強固にするために、自分はその逃げ道をふ さごうとする。 死地ならば、力いっぱい戦わなければ滅亡するのだ から、自分は軍隊にとても生き延びられないことを認 識させようとする。 そこで、兵士たちの心としては、 囲まれたなら、命ぜられなくとも抵抗する。 戦わないでおれなくなれば、激闘する。 あまりにも危険であれば、従順になる。 (一)諸侯たちの腹のうちがわからないのでは、前もって同盟することはできない。 (二)山林?険しい地形?沼沢地などの地形がわからないのでは、軍隊を進めることはできない。 (三)その土地の案内役を使えないのでは、地形の利益を収めることはできない。 これら三つのことは、その一つでも知らないのでは、覇王の軍ではない。 そもそも、覇王の軍は、もし大国を討伐すれば、その大国の大部隊も集合することができない。もし威勢が敵国をおおえば、その敵国は孤立して、他国と同盟することができない。こういうわけで、天下の国々との同盟を務めることをせず、また天下の権力を自分の身に積み上げることをしないでも、自分の思いどおり勝手にふるまっていて、威勢は敵国をおおっていく。だから、敵の城も落とせるし、敵の国も破れるのである。 ふつうのきまりを越えた重賞を施し、ふつうの定めにこだわらない禁令を掲げるなら、全軍の大部隊を働かせるのも、ただの一人を使うようなものである。 軍隊を働かせるのは、任務を与えるだけにして、その理由を説明してはならない。 軍隊を働かせるのは、有利なことだけを知らせて、その害になることを告げてはならない。 誰にも知られずに、軍隊を滅亡すべき状況に投げ入れてこそ、はじめて滅亡を逃れる。死すべき状況に陥れてこそ、はじめて生き延びる。そもそも、兵士たちは、そうした危難に陥ってこそ、はじめて勝敗を自由にすることができるものである。 九 〈はじめは処女のごとく、後は脱兎のごとく〉 戦争を遂行する上での要点は、敵の意図に順応して 故に兵を為すの事は、敵の意を 順詳するに在り。并一にして敵に調子を合わせるところにある。 向かい、千里にして将を殺す、此 敵の進路と行程に歩調を合わせて進軍して、敵軍とれを巧みに能く事を成す者と謂う 同一の目的地を目指し、千里もの遠方で正確に会敵しなり。是の故に政の挙なわるるのて敵将を倒すのは、これぞ鮮やかな仕事ぶりと称する日は、関を夷,とど,め符を折,く だ,きて其の使を通ずること無く、のである。 廊廟の上にきび,厂艸属,しくし こうしたわけだから、ついに開戦の政令が発動されて以て其の事を誅,せ,む。敵人た日には、 開闔,かいこう,すれば必らず亟 ,すみや,かにこれに入り、其の 国境一帯の関所をことごとく封鎖する。 愛する所を先きにして微,ひそ, かにこれと期し、践墨,せんもく, 通行許可証を無効にする。 して敵に随,したが,いて以て戦 事を決す。是の故に始めは処女の 敵国の使節の入国を禁止する。 如くにして、敵人 戸を開き、後 は脱兎の如くにして、敵人 拒ぐ 廟堂の上で廟議をおごそかに行なって、戦争計に及ばず。 画に決断を下す。 いよいよ自軍が国境地帯に進出し、敵側が不意を衝 かれて防衛線に間隙を生じたならば、 必ずそこから迅速に侵入する。 敵国がぜひとも防衛したがる地点に、先制の偽 装攻撃をかける。 出動してくる敵軍と、ある日時?ある地点で会 敵しようとひそかに心を決める。 先制攻撃地点をひそかに離脱し、全軍黙って敵 軍の進撃路に調子を合わせて進む。 予定通りに敵軍を捕捉して会戦に入り、一挙に 戦争の勝敗を決する。 こうしたわけで、最初のうちは乙女のようにしおら しく控えていて、いざ敵側が侵入口を開けたとたん、 あとは追っ手を逃れるウサギのように、一目散に敵 国のふところ深く侵攻してしまえば、もはや敵は防ぎ ようがないのである。 十二 火攻篇〈軽々しく戦争を起こすな〉 十二 火攻篇〈軽々しく戦争を起こすな〉 一 〈五種類の火攻め〉 孫子曰わく、 およそ火を用いる攻撃法には五種類ある。 凡そ火攻に五あり。 一に曰わく火人、二に曰わく火 積、三に曰わく火輜、四に曰わく ,:火人(兵士を焼きうちする) 火庫、五に曰わく火隊。 ,:火積(野外の集積所に貯蔵されている物資を 火を行なうには必ず因あり、火焼き払う) をと,火票,ばすには必ず素より 具,そな,う。火を発するに時あ ,:火輜(物資輸送中の輜重部隊を焼きうちする) り、火を起こすに日あり。時とは 天の燥,かわ,けるなり。日とは ,:火庫(屋内に物資を保管する倉庫を焼き払う) 宿の箕?壁?翼?軫に在るなり。 凡そ此の四宿の者は風の起こるの ,:火隧(敵の補給路、行軍路、橋梁などを炎上日なり。 させる) 二 火攻めの実行には、自軍に内応したり、敵軍内に紛 れ込んで放火する破壊工作員が当たる。内応者や破壊 凡そ火攻は、必ず五火の変に因工作員は、必ず前もって用意しておく。 りてこれに応ず。 火を放つには、適当な時節がある。放火後、火勢を 火の内に発するときは則ち早く盛んにするには、適切な日がある。 これに外に応ず。 火をつけるのに都合のよい時節とは、天気が乾燥し 火の発して其の兵の静かなる者ている時候のことである。 は、待ちて攻むること勿く、其の 火力を極めて、従うべくしてこれ 火災を大きくするのに都合のよい日というのは、月に従い、従うべからざるして止む。 の宿る場所が、箕?壁?翼?軫の星座と重なる日の ことである。およそ、これら四種類の日は、風が盛ん 火 外より発すべくんば、内にに吹きはじめる日である。 待つことなく、時を以てこれを発 す。 およそ、火攻めは、必ず五とおりの火の変化に従っ て、それに呼応して兵を出す。 火 上風に発すれば、下風を攻 むること無かれ。 (一)味方の放火した火が、敵の陣営の中で燃えだし たときには、すばやくそれに呼応して、外から兵をか 昼風は従い夜風は止む。 ける。 凡そ軍は必らず五火の変あるこ(二)火が燃えだしたのに敵軍が静かな場合には、しとを知り、数を以てこれを守る。 ばらく待つことにして、すぐに攻めてはならない。そ の火勢にまかせて様子をうかがい、攻撃してよければ 攻撃し、攻撃すべきでなければやめる。 (三)火を外からかけるのに都合がよければ、陣営 の中で放火するのを待たないで、適当な時を見て火を かける。 (四)風上から燃えだしたときには、風下から攻撃し てはならない。 (五)昼間の風は利用するが、夜の風はやめる。 およそ、軍隊では必ずこうした五とおりの火の変化の あることをわきまえ、技術を用いてそれを守るべきで ある。 三 〈火攻めは水攻めにまさる〉 だから、火を攻撃の補助手段にするのは、将軍の頭 故に火を以て攻を佐,たす,く る者は明なり。水を以て攻を佐く脳の明敏さによる。 る者は強なり。水は以て絶つべき 水を攻撃の補助手段にするのは、軍の総合戦力の強も、以て奪うべからず。 大さによる。 水攻めは敵軍を分断することはできても、敵軍の 戦力を奪い去ることはできない。 四 〈死んだ者は帰ってこない〉 夫れ戦勝攻取して其の功を修め そもそも戦闘に勝利を収め、攻撃して戦果を獲得しざる者は凶なり。命,なづ,けてたにもかかわらず、それがもたらす戦略的成功を追求費留と曰う。故に明主はこれを慮しないでだらだら戦争を続けるのは、国家の前途に対り、良将はこれを修め、利に非ざして不吉な行為である。これを、国力を浪費しながられば動かず、得るに非ざれば用い外地でぐずぐずしている、と名付ける。 ず、危うきに非ざれば戦わず。主 は怒りを以て師を興こすべから そこで、先を見通す君主は、すみやかな戦争の勝利ず。将は慍,いきどお,りを以てと終結を熟慮する。 戦いを致すべからず。利に合えば 而ち動き、利に合わざれば而ち止 国を利する将軍は、戦争を勝利の中に短期決着させまる。怒りは復た喜ぶべく、慍りる戦略的成功を追求する。 は復た悦ぶべきも、亡国は復た存 すべからず、死者は復た生くべか 利益にならなければ、軍事行動を起こさない。 らず。故に明主はこれを慎み、良 将はこれを警,いまし,む。此れ 勝利を獲得できなければ、軍事力を使用しない。 国を安んじ軍を全 危険が迫らなければ、戦闘しない。 君主は、一時の怒りの感情から軍を興して戦争を始 めてはならない。 将軍は、一時の憤激に駆られて戦闘してはならな い。 国家の利益に合えば軍事力を使用する。国家の利益 に合致しなければ軍事力の行使を思いとどまる。 怒りの感情はやがて和らいで、また楽しみ喜ぶ心境 に戻れる。憤激の情もいつしか消えて、再び快い心境 に戻れる。 しかし、軽はずみに戦争を始めて敗北すれば、滅ん でしまった国家は決して再興できず、死んでいった 者たちも二度と生き返らせることはできない。 だから、先見の明を備える君主は、軽々しく戦争を 起こさぬよう、慎重な態度で臨む。 国家を利する将軍は、軽率に軍を戦闘に突入させな いように自戒する。 これこそが、国家を安泰にし、軍隊を保全する方法 なのである。 十三 用間篇〈スパイこそ最重要員〉 十三 用間篇〈スパイこそ最重要員〉 一 〈敵情を察知せよ〉 およそ十万規模の軍隊を編成し、千里の彼方に外征 孫子曰わく、 するとなれば、民衆の出費や政府の支出は、日ごとに 凡そ師を興こすこと十万、師を千金をも消費するほどになり、遠征軍を後方で支える 出だすこと千里なれば、百姓の費、ために朝野を問わずあわただしく動き回り、物資輸送 公家の奉、日に千金を費し、内外に動員された人民は補給路の維持に疲れ苦しんで、農 騒動して事を操,と,るを得ざる事に専念できない者たちは七十万戸にも達する。 者、七十万家。相い守ること数年 こうした苦しい状態で、数年にもおよぶ持久戦を続にして、以て一日の勝を争う。而けたのちに、たった一日の決戦で勝敗を争うのであるに爵禄百金を愛んで敵の情を知 らざる者は、不仁の至りなり。人る。 の将に非ざるなり。主の佐に非ざ それにもかかわらず、間諜に爵位や俸禄や賞金を与るなり。勝の主に非ざるなり。故えることを惜しんで、決戦を有利に導くために敵情をに明主賢将の動きて人に勝ち、成探知しようとしないのは、不仁の最たるものである。功の衆に出ずる所以の者は、先知そんなことでは、とても民衆を統率する将軍とはいえなり。先知なる者は鬼神に取るべず、君主の補佐役ともいえず、勝利の主宰者ともいえからず。事に象るべからず。度にない。 験すべからず。必らず人に取りて 敵の情を知る者なり。 だから、聡明な君主や知謀にすぐれた将軍が、軍事 行動を起こして敵に勝ち、抜群の成功を収める原因 は、あらかじめ敵情を察知するところにこそある。事 前に情報を知ることは、鬼神から聞き出して実現でき るものではなく、天界の事象になぞらえて実現できる ものでもなく、天道の理法とつきあわせて実現するこ ともできない。必ず、人間の知性によってのみ獲得で きるのである。 二 〈五種類のスパイ〉 故に間を用うるに五あり。郷間 そこで、間諜の使用法には五種類ある。 あり。内間あり。反間あり。死間 ,:因間 あり。生間あり。五間倶に起こっ て其の道を知ること莫し、是れを ,:内間 神紀と謂う。人君の宝なり。 ,:反間 郷間なる者は其の郷人に因りて これを用うるなり。 ,:死間 内間なる者は其の官人に因りて ,:生間 これを用うるなり。 これら五種の間諜が平行して諜報活動を行ないな 反間なる者は其の敵間に因りてがら、互いにそれぞれが位置する情報の伝達経路をこれを用うるなり。 知らずにいるのが、神妙な統括法(神紀)と称し、人 民を治める君主の貴ぶべき至宝なのである。 死間なる者は誑,きょう,事を 外に為し、吾が間をしてこれを知(五)生間というのは、繰り返し敵国に侵入しては生って敵に伝えしむるなり。 還して情報をもたらすものである。 生間なる者は反,かえ,り報ず(一)因間というのは、敵国の民間人を手づるに諜報るなり。 活動をさせるものである。 (二)内間というのは、敵国の官吏を手づるに諜報活 動をさせるものである。 (三)反間というのは、敵国の間諜を手づるに諜報活 動をさせるものである。 (四)死間というのは、虚偽の軍事計画を部外で実演 して見せ、配下の間諜にその情報を告げさせておい て、あざむかれて謀略に乗ってくる敵国の出方を待ち 受けるものである。 三 〈スパイを使いこなす〉 故に三軍の親は間より親しきは そこで、全軍の中でも、 莫く、賞は間より厚きは莫く、事 は間より密なるは莫し。聖智に非 君主や将軍との親密さでは間諜が最も親しい。 ざれば間を用うること能わず、仁 恩賞では間諜に対するものが最も厚い。 義に非ざれば間を使うこと能わ ず、微妙に非ざれば間の実を得る 軍務では間諜のあつかうものが最も秘密裏に進こと能わず。微なるかな微なるかめられる。 な、間を用いざる所なし。間事未 だ発せざるに而も先ず聞こゆれ 君主や将軍が俊敏な思考力の持ち主でなければ、軍ば、其の間者と告ぐる所の者と、事に間諜を役立てることはできない。 皆な死す。 部下への思いやりが深くなければ、間諜を期待どおり四 忠実に働かせることができない。 凡そ軍の撃たんと欲する所、城 微妙なことまで察知する洞察力を備えていなけれの攻めんと欲する所、人の殺さんば、間諜のもたらす情報の中の真実を選び出すことがと欲する所は、必らず先ず其の守できない。 将?左右?謁者?門者?舎人の姓 名を知り、吾が間をして必らず索 何と測りがたく、奥深いことか。およそ軍事の裏側,もと,めてこれを知らしむ。 で、間諜を利用していない分野など存在しないのであ る。 五 君主や将軍が間諜と進めていた諜報?謀略活動が、 敵間の来たって我れを間するまだ外部に発覚するはずの段階で他の経路から耳に者、因りてこれを利し、導きてこ入った場合には、その任務を担当していて秘密を漏られを舎せしむ。故に反間得て用うした間諜と、その極秘情報を入手して通報してきたべきなり。是れに因りてこれを知者とは、機密保持のため、ともに死罪とする。 る。故に郷間?内間 得て使うべ きなり。是れに因りてこれを知る。 撃ちたいと思う軍隊?攻めたいと思う城?殺したい故に死間 誑事を為して敵に告げと思う人物については、必ずその しむべし。是れに因りてこれを知 る。故に生間 期の如くならしべ 官職を守る将軍 し。五間の事は主必らずこれを知 る。これを知るは必ず反間に在り。 左右の近臣 故に反間は厚くせざるべからざる なり。 奏聞者 六 門を守る者 昔、殷の起こるや、伊摯,いし, 宮中を守る役人 夏に在り。周の興こるや、呂牙 殷 に在り。故に惟だ明主賢将のみ能の姓名をまず知って、味方の間諜に必ずさらに追求し く上智を以て間者と為して必らずて、それらの人物のことを調べさせる。 大功を成す。此れ兵の要にして、 三軍の恃みて動く所なり。 敵の間諜でこちらにやってきてスパイをしている者 は、つけこんでそれに利益を与え、うまく誘ってこち らにつかせる。そこで反間として用いることができる。 反間によって敵情がわかるから、因間や内間も使うことができる。 反間によって敵情がわかるから、死間を使って偽りごとをした上で、敵方に告げさせることができる。 反間によって敵情がわかるから、生間を計画どおりに働かせることができる。 五とおりの間諜の情報は、君主が必ずそれをわきまえるが、それが知れるもとは、必ず反間によってである。そこで、反間はぜひとも厚遇すべきである。 昔、殷王朝が始まるときには、建国の功臣伊摯が間諜として敵の夏の国に入り込んだ。 周王朝が始まるときには、建国の功臣呂牙が間諜として敵の殷の国に入り込んだ。 だから、聡明な君主やすぐれた将軍であってこそ、はじめてすぐれた知恵者を間諜として、必ず偉大な功業を成し遂げることができるのである。この間諜こそ戦争のかなめであり、全軍がそれに頼って行動するものである。
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上传时间:2017-11-28
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